第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
…これじゃあなんの意味もないどころか…ただ自分の存在を知らせに来たようなものじゃない…!あの人が本当に隠なのであれば…きっとなんかしらの報告が上がって誰かが探しに来るかもしれな……っ…
そこまで考えて私ははたと気がついた。私は、あんな風に姿を消した私のことを
"誰かが探しにきてくれる"
と思っていると。
…なんて…自惚れた考えなの…
それに気がついてしまった途端、どうしようもなく恥ずかしくなった。わざわざ森の中に入り、コソコソと相手の正体を探り、しまいには自分の居どころが知られて誰かが探しに来ることを心配するなど…自らの意思であの場所を手放したというのに、私は一体何を期待しているのだろうか。
…馬鹿馬鹿しい…帰ろう…
気配を断つのをやめ、草木の間から街へと続く一本道に出る。私はそのままゆっくりと歩き始めたが、黄な粉をおじさんに預けっぱなしなことを思い出し、5割程度の力を出して走り始めた。
街に着き、おじさんから黄な粉を受け取った私は、どこにも立ち寄らずすぐにしずこさんの元へと帰った。
"あれ早かったねぇ"
なんてしずこさんに言われたが、"やっぱり疲れたので帰ってきちゃいました"と、適当な返事をした私は、店の片付けを済ませ、明日の仕込みをし、いつもの通り、しずこさんと穏やかな夜を過ごしたのだった。
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3日目。接客をしなければならない最終日。
「ありがとうございました」
「じゃあねぇ。またくるよぉ」
特段問題もなく、そしてお店に迷惑をかける事もなく仕事をこなすことが出来、間も無く店じまいの時間を迎える。
店内にいた本日最後のお客さんである常連のおばあちゃんを外まで見送り
「…よしと」
"本日おしまい"の看板をかかげると、私は再び店の中へと戻った。
そのまま先程までおばあちゃんが腰掛けていたテーブルへと向かい、裏に持って行こうと湯呑みとお皿がのったおぼん持ち上げた。そのとき
ガラッ
すでに今日の営業を終えはずの店の扉が開いた。