第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
蝶屋敷の玄関を出て外に出た私は
「和っ!」
自身の鎹鴉であるかわいい相棒の名を呼んだ。すると
「なぁにぃ〜?どうかしたのぉ〜」
相変わらずののほほんとした調子で私の元へと飛んできた。肩にとまった和の頭を人差し指でカリカリとしてあげると
「あ〜!これこれ!これなのぉ〜!鈴音のしてくれるこれがすきなのぉ〜」
和はその小さな身体を上下に揺らしながらそう言った。
「これから杏寿郎さんのお家にお邪魔しようかと思ってて…悪いんだけど、先に行って杏寿郎さんに私が向かってることを伝えてもらえない?」
「炎柱様のところぉ〜!行くのぉ〜!やったぁ〜」
和はそう言いながらバサリと大きく羽音を立て、私の肩から空へと舞い上がった。
「行くの〜行ってくるの〜鈴音も早くきてねぇ〜」
言い終わるよりも早く、和は炎柱様の生家がある方へと飛んで行ってしまった。
…私も…早く行こう
杏寿郎さんに、早く会いたかった。早く会って、あの瞳で、あの声で、あの顔で
"左耳が聞こえずとも関係ない!君なら大丈夫だ!"
"発揮できる能力が減ったとしても、鈴音は必要な存在だ!"
そう言って欲しかった。不安な気持ちを、杏寿郎さんの太陽のような光で焼き尽くして欲しかった。
けれども、神様はそんな私の甘えを許してはくれなかった。
杏寿郎さんの生家がある町へと続く一本道を歩いていると、正面から私と同じく隊服を身に纏った女性隊士3人が歩いてくるのが見えた。
見た事ない人たちだ。会釈だけして…そのまま横を通り過ぎちゃおう
私は段々と大きくなってくる3人の姿を視界に映しながらそんなことを考えていた。互いの距離が近くなり、会釈をしながら横を通り抜けようと道の左側にずれたその時
「ちょっと…待って」
3人組の真ん中、1番背が高く、綺麗な顔をした女性隊士がそう言った。私は、まさか自分が声をかけられているとは思わず、そのまま止まらずに歩き続けた。