第10章 奏でて、戦いの音を
ギュルルルルルルル
鎌の鬼の身体から無差別に放たれた旋回攻撃を
「響の呼吸肆ノ型…っ空振波浄!」
音の波で打ち消そうと試みる。
…やった…でも…勢いが強すぎて…押されてる…!
意図した通り攻撃を避けることは出来たが、段々と音の壁は狭くなり、攻撃が迫ってくる。何とかしなければと舞を舞う様に腕を動かし、波を作り続けるも
…だめだめ…せっかくここまで頑張ったのに…!
無情にも攻撃はやまず、音の壁は外側から消えていく。
”もうダメだ”
そう思ったその時
キィ
…え?
私が知っているよりもかなり幼い姿の禰󠄀豆子ちゃんが炭治郎君の箱からひょっこりと現れ
「ムゥゥゥゥゥゥ!」
身体の前で小さな握りこぶしをぎゅっと作り、空に向けるようにしながらそれを開いた。
するとその手から
ボッ
不思議な色の炎が広がっていく。
「…っ!?」
…っ何…?
その不思議な炎は、私達を包み込みように燃え広がり、鬼が放った旋回攻撃を次々に燃やし尽くしていく。それにも関わらず
「…全然…熱くない…」
炎と接触している私の身体のどの部分も、隊服も、なんの影響も受けていなかった。私は、放ち続けていた型をやめ、日輪刀の柄を持っている素肌の部分をしげしげと観察する。
そうしている間に、あの旋回攻撃はすべて燃え尽き、辺りは驚くほどの静けさに包まれた。
…一体…どうなってるんだろう…?
そう思っていたのは私だけではなかったようで
「…こりゃ一体どういうことだ…毒が消えた」
背後から聞こえてきた天元さんの声につられて振り返ると、毒を食らいすっかり変色してしまっていた筈の個所は、砂ぼこりが付き汚れた状態ではあるものの、あのおどろおどろしい濃い紫色はなくなっていた。
「…すごい…どうして…?」
目を見開き、胡坐をかきながら自身の身体のあちこちを確認している天元さんを見ていると
「禰󠄀豆子の血鬼術が毒を燃やして飛ばしたんだと思います」
炭治郎君が、禰󠄀豆子ちゃんの頭を優しい手つきで撫でながらそう言った。そうされた禰󠄀豆子ちゃんは、ニコニコと嬉しそうに微笑みながら、もっとしてと言わんばかりに炭治郎君の手にじゃれついている。