第10章 奏でて、戦いの音を
「雑魚馬鹿蠅め!俺たち兄妹の勝ちだ!」
「…残念でした。私には…じぃちゃん直伝、雷の呼吸が残ってるの」
勝ち誇ったように笑う鎌の鬼に向けそう告げたあと
シィィィィィィ
「雷の呼吸壱ノ型…っ霹靂一閃!」
鬼の頸…ではなく、炭治郎君の日輪刀目掛け型を放った。
ガキーンッ
私の日輪刀が耳の奥に響いてくるような音を立てなが炭治郎君の日輪刀を捉えた直後
ザンッ
鎌の鬼の頸はその身体から両断され、鬼の頭部が空高く舞った。
…斬れた…っ!
ようやく頸を斬り落とすことに成功し、”勝てたんだ”と喜びそうになるも、よく考えてみればこの鬼は兄と妹の頸を同時に斬り落とさなければ倒すことは出来ない。
それでも
…杏寿郎さんがいるんだもん…絶対に大丈夫
そんな願いにも近い思いで、空を見上げると
「…っ!」
鎌の鬼の頭部の向こうに、帯の鬼の頭部も舞っているのが目に入った。
「「…っやったぁぁぁ!!!」」
炭治郎君と声を合わせ、私たちの勝利を喜んでいると
「っ不味い!ここから離れろ!!!」
左目を手で押さえた天元さんが慌てた様子で私と炭治郎君に近寄ってくる。どうしたのかと思いそちらに視線を向けると
「…っ!?!?」
頭部と離れ離れになり、身体だけになった鎌の鬼から禍々しい気配を感じた。
…嘘でしょ…
毒が回ってしまっているのか、ふらついている天元さんに駆け寄る。それから天元さんの腕を肩に担ぎ、急いでその場を離れようとするも、天元さん巨体は私の力では重すぎて早く移動することが出来ない。
「っ馬鹿早く逃げろ!」
「そんなこと…出来るわけないじゃないですか!!!」
「馬鹿言えこのままじゃお前も「右耳の側で大声出さないで!くらくらするの!」っ!」
「宇髄さん!鈴音さん!急いで!」
反対側に炭治郎君も加わってはくれたが、炭治郎くんも怪我を負っているせいか大幅に移動速度が上がるわけでもない。
…だめ…間に合わない!
「っお願いです!私の背中に…出来るだけくっついてください!」
「…っ成程、わかった!」
「え!?でも「いいからこいつの言う通りにしろ!」…っはい!」
私の意図することを察してくれた天元さんが、炭治郎君を引き寄せぎゅっと小さく縮こまった。