第10章 奏でて、戦いの音を
鎌の鬼の旋回攻撃を全て弾き返し、宣言通り活路を開いて行く天元さん。そしてその背中にピタリと付き、その時が来るのを待つ炭治郎君。そしてさらにその後ろを走る私。
…縦一列に3人並んで…ちょっと間抜けかも
そんな的外れなことを考えながらも、ただただ前の2人の動きに集中した。
そして、その時は訪れた。
ドスッ
天元さんの日輪刀が鎌の鬼の腹部を貫通し、その動きを奪う。鎌の鬼はそれから逃れようと、天元さんへ鎌を振りぬいた。
ビシャッ
飛び散る血しぶきが、鎌の刃先が天元さんの顔に届いてしまっていることを嫌でも示していた。
「宇髄さんっ!!!」「天元さん!!!」
…斬られた部分が多ければ…それだけ毒のまわりが速くなるんじゃ…!?
そんな不安が頭をかすめたものの
…っ今は、自分がやるべきことに集中するの!!!
自分に言い聞かせぐっと唇を嚙み締めた。
「止まるな!跳べェェェ!!!」
炭治郎君は、天元さんのその怒号にも近い声に呼応するように跳び上がり、鬼の頸めがけてその黒刀を思い切り振った。鎌の鬼は、その刃が届く前にその攻撃を阻止せんと炭治郎君に向け鎌を振り上げる。
私は右手に持っていた日輪刀を一瞬で鞘に戻し、太腿へと手を伸ばしクナイを1本手に取ると
…っさせない!
炭治郎君の顎を突き刺さんとしている鎌に向けそれを放った。
ガキーンッ
「…っまたお前かぁぁぁあ!」
軌道が変わった鎌は炭治郎君の顔を横切り
ドギャッ
炭治郎君の刀が鬼の頸を捉えた。けれどもその刃は、鬼の頸を三分の一程進んだところでとまり、それ以上進まなくなってしまう。
そんな様子に鎌の鬼は
「お前みたいな屑に、俺の頸が斬れるわけがねえ」
薄笑いを浮かべそう言った。
けれども私は、この状況を1度経験している。
「…人間ってのはねぇ…あんたたちと違って失敗から学んで成長すんのよっ!!!」
左に持っていた日輪刀も鞘に戻し、左右左とクナイを投げた。
キンキンキンッ
「っなんだ!?!?」
放ったクナイは3本すべて炭治郎君の日輪刀に命中し、クナイが当たった分だけ鬼の頸にズズズッと深く食い込んでいく。
それでもまだ鬼の頸と身体は繋がったままだ。