第10章 奏でて、戦いの音を
霹靂一閃の勢いのまま雛鶴さんを通り越してしまい
…不味い…着地地点がないから止まれない!早く戻らないとまた雛鶴さんが…!
焦りを覚えるも
ザッ
と、炭治郎君が雛鶴さんを背に隠すように鎌の鬼と雛鶴さんの間に割って入ってくれた。グリンと空中で一回転し、なんとか屋根へと着地している間に、鎌の鬼の腕はすでに回復してしまったようで
ドン
炭治郎君に向け両腕を大きく広げながら斬り掛かっていく。
咄嗟に太腿にくくりつけているクナイに手を伸ばし
ヒュンッヒュンッ
鎌の鬼の腕に向けソレを放った。
「…なに!?」
日輪刀を持ち戦っている私が、まさかクナイを投げてくるとは思っていなかったのか、クナイは2本とも狙った的である鎌の鬼の腕に突き刺さった。
「てめえ…!」
鎌の鬼が私のことをギロリと睨みつけたその時
「荒山!竈門炭治郎!お前らに感謝する!!!」
天元さんの日輪刀が、鎌の鬼の頸に迫り、それに合わせるように炭治郎君も天元さんとは逆側から日輪刀を振った。
…いける!!!
そう思ったのだが
ガチイン
私の耳に届いたのは、鬼の頸が切れるあの不快な音ではなく、刀と刀がぶつかり合うような金属音だった。
「お前らが俺の頸斬るなんて、無理な話なんだよなあ」
馬鹿にするような口調でそう言った鎌の鬼は、手に持っている刀を肉片化し、天元さんと炭治郎君の日輪刀を動かせないようにしていた。
それでも天元さんは、もう一本、右の手で待っていた方の日輪刀を振り、再びその頸を捉えんとする。
喉元に切先が届こうとしたその時
…っ嘘でしょ!?
鎌の鬼の首が180度回転し
ガキィン
その歯で天元さんの日輪刀を食い止めた。
…何なのあれ…いくらなんでもめちゃくちゃでしょ!?
そんな事を考えていると
…っだめ!あの技が…くる!
一瞬聴こえてきた音に、鎌の鬼が先ほど派手に吹き飛ばされてしまったあの技を再び放とうとしていることが窺い知れる。