第10章 奏でて、戦いの音を
…っ勢いがありすぎて…止まれない…!
ズキャアァン
「…っかは!」
背中から建物の壁に突っ込んでしまい、鈍い痛みが背中を走る。
…っ…大丈夫…ぶつけた痛みしかない
鈍い痛みを堪えながら急いで立ち上がり、飛ばされる前までいた場所に戻るも、そこには驚いた表情を浮かべている天元さんしかいなかった。
ブワッ
風の音が雛鶴さんへと向かい
「…だめ…っ!」
これから起こるであろう最悪の未来が脳裏に過ぎる。
「雛…」
それは天元さんも同じだったようで、聞いたことのないような慌てた声色でその名を呼びかけた。
当の雛鶴さんはその事には気がついていないようで
「天元様!私に構わず鬼を探してくださ…」
言葉を紡ぎかけた雛鶴さんだが
ガッ
ぬるりと現れた鎌の鬼が、その綺麗な口を、黙れと言わんばかりに片手で覆い隠すように掴んだ。
「よくもやってくれたなああ…俺はお前にかまうからなああ」
鎌の鬼が顔と顔が触れてしまいそうなほどの至近距離で雛鶴さんを睨みつけている。
「雛鶴ーっ!!!」
ミシッと骨の軋む音が聴こえ、鎌の鬼が雛鶴さんに何をしようとしているかなど、考えるまでもなくわかってしまった。
「やめろーっ!!!」
天元さんの行手を阻むように帯の数が増え、雛鶴さんと鎌の鬼がいる屋根の上へ近づくことが出来ず、悲痛な叫び声が私の耳の奥を激しく振るわせた。
「宇髄さんっ!」
炭治郎君も、懸命に近づこうとしているが疲れが出てきたのか、やはり近づくことが出来ずにいる。
ミシミシ
更に力が加わるその音に、怒りでカッと頭が沸騰するかのように熱くなる。それなのに、相反するように心がフッと冷たくなった。
…絶対に…そんなことさせない
弾き飛ばされ、離れた距離にいる私のところに帯は来ていない。
…絶対に…助けるんだから!
シィィィィィ
「雷の呼吸壱ノ型…霹靂一閃っ!」
光の速度で鎌の鬼との距離を詰め
ザシュッ
「…っ汚い手で…雛鶴さんに触らないで!」
鬼の手首を切り落とした。