第10章 奏でて、戦いの音を
帯に加え鎌のように四方から飛んでくる斬撃を炭治郎君と共に否しながら、天元さんと自分の動きの調子を合わせて行く。
そして
"スゥゥゥッ"
天元さんが呼吸を深くした音に合わせ、その背中に邪魔にならないように限界まで近づき
「音の呼吸伍ノ型…鳴弦奏々!」
天元さんが型を放ち、それを鎌の鬼が受けたのを確認してから
「響の呼吸弐ノ型…共響音陣!」
ひと息呼吸を置き、型を放った。
「…ックソ…なんだあ!?」
鎌の鬼は、受け止めたはずの天元さんの攻撃の威力が増したことに驚き、天元さんの攻撃をまともに喰らったようだった。
更に、天元さんに炭治郎君、そして私以外はここにいないはずなのに
ガッ
と、誰かが屋根瓦を踏み締めた音が聴こえたかと思うと
ビイン
その音の出どころから無数のクナイが飛んできた。慌ててそちらに顔を向けると
「…っ…雛鶴さん!」
顔色が悪いながらも重そうな忍具を構えた雛鶴さんが屋根の上に立っていた。
…無事で良かった…それにクナイがあんなに!かわされたとしても、拾い集めれば使える筈!
真っ直ぐに鎌の鬼に向け放たれたクナイは、ある程度は鬼に突き刺さると思われが
ギャリリリリ
身体を守るように放たれた斬撃で、かなりの数が叩き落とされてしまう。それでも
「っ天元さん!」
頬に、腕に、クナイを刺しながらも鬼に向け突き進んでいく天元さんの日輪刀が
ヒュガッ
鎌の鬼の脛に届いた。更に、幸運にも叩き落とされなかった一本のクナイが
ドス
天元さんの勢いを後押しするように鬼の鎖骨に突き刺さる。
…っ今だ!
鬼の正面から天元さんが、右側から炭治郎君が、そして左側から私が詰め寄り3人同時にその頸を狙う。
いける!
そう思ったのも束の間
ドン
藤の毒を早々に分解してしまったのか
「いやあよく効いたぜこの毒はなあ」
鎌の鬼の左脚が再生してしまった。そしてなんの動作もなしに
…っ不味い!
両腕から渦のように広がる攻撃が放たれ、日輪刀を交差し咄嗟に直撃は免れたものの
「…っくあ!」
「っ荒山!」
その勢いに押されて、私の身体は後方へとすっ飛ばされた。