第10章 奏でて、戦いの音を
…今…鎌の鬼と帯の鬼…言葉の内容も声も…重なってなかった?
目の前にいる鎌の鬼と頭上にいる帯の鬼は互いに距離があり、善逸や私のように特殊な耳を持っていない限り、声を揃えて喋ることなど出来るはずがない。
けれども確かに一語一句ズレることなく声が重なり合っていた。
「…っ!?…目が…」
声を重ね恨み辛みを述べる鎌の鬼の左目が閉じられており、向こうにいる伊之助君の反応からいくと、閉じられたその目が帯の鬼の額に現れていることが窺い知れる。
上弦の陸は
「「お前らも同じように喉笛掻き切ってやるからなあぁ」」
そう言った後
「…っ!」
思わず尻込みしてしまいそうな程の殺気を放った。
…っ…でも…絶対に負けない!
ふぅぅぅぅ
息を長く吐き、音と気配を感じることに神経を集中させる。
ピシッ
鎌の鬼の足の関節が鳴る音で
「炭治郎君!そっち行くよ!」
「…っはい!」
先の動きを予測し声をかけた。けれども、炭治郎君の想定以上に鎌の鬼の動きが速かったのか、鬼の鎌が顎に掛かろうとしいている。
…っ不味い!
炭治郎君の背中を掴もうと腕を伸ばそうとしたその時、私の腕よりも速く天元さんの手がその襟首へと伸びた。
ブワッ
と、天元さんの左腕で上に放られた炭治郎君の背中を今度こそ掴み、自分の方へと引き寄せた。
「帯の動く音がする!攻撃がこっちに来るよ!炭治郎君は天元さんが鎌の鬼に集中できるように帯を防いで!」
「…っわかりました!」
「頼んだよ!」
私は炭治郎君から離れ、斬り合う天元さんと鎌の鬼の様子に全神経を集中し、攻撃を加えられる隙を窺う。
…っだめだ!下手に割り込もうとすれば逆に邪魔になっちゃう…!手数は少ないけど…やっぱり杏寿郎さんと一緒に上弦の参と戦った時と同じように距離を取りながら戦うしかない…!
あの時以上に爆玉の数は限られている。クナイも太腿に差し込んである小ぶりの4本しかない。使い時をあの時以上に見極める必要がる。
けれども今回は、それらに加えてもう一つ、距離をとりながら天元さんの戦いを助ける方法がある。