第10章 奏でて、戦いの音を
それを塞いだのは
ドォォォオン
稲妻のような速さで帯の鬼に攻撃を仕掛けた善逸だった。帯の鬼と共に屋根を突き破って行った善逸に
「善逸!」
炭治郎君が心配げな表情で声を掛ける。そんな炭治郎君に
「帯の鬼は俺と我妻少年、それから嘴平少年に任せろ!竈門少年は宇髄と鈴音と共に鎌の鬼の頸を狙え!自分が戦う相手に集中!」
杏寿郎さんがそう声をかけながら善逸が開けた穴を潜り、善逸と帯の鬼を追って出て行った。
「煉獄さん!」
更に
「蚯蚓女は俺と寝ぼけ丸とぎょろぎょろ目ん玉に任せろ!お前らはその蟷螂を倒せ!わかったな!」
伊之助君が気合十分な様子で、建物の側面に開いた穴から出て行く。
「気をつけろ!」
「おうよ!」
そんな炭治郎君と伊之助君のやり取りから、互いのことを信頼しあっている様子が見て取れた。
…仲間って感じ…良いな
そんなことを考えながら、両の手にもった日輪刀を持ち直し、鎌の鬼をじっと睨むように据えた。
鎌の鬼はニヤリと怪しい笑みを浮かべると
「妹はやらせねえよ」
意味ありげに言った。
…何?…何か…戦いながら帯の鬼を守る策でもあるって言うの…?
その様子がどうしても気になった私は
「…響の呼吸参ノ型…っ音響明知」
より確かな状況把握をするために、呼吸で向こうの様子を探った。
「響の呼吸だあ?聞いたことねえなぁ。何にも起こんねえし、そもそもお前、すげえ弱そうだし、どうだっていいなあ」
鎌の鬼はそう言いながら私を馬鹿にするためなのか、片目を瞑った。
…好きに言えばいい…
そんな言葉に耳を傾けることすら馬鹿馬鹿しく、ただ向こうの状況を把握することに専念する。
視界に映る天元さんと炭治郎君は、鎌の鬼から適度な距離を保ちながら様子を伺っているようだった。
すると
「「違うなあそれは」」
「…違う?何がだ」
天元さんに炭治郎君、そして私も、何も言っていないにも関わらず、鎌の鬼が急に喋り出した。