第10章 奏でて、戦いの音を
「次から次へと…何だ?」
気怠げにそう言った先程まではいなかったはずの鎌を持つ鬼は
…っ…何こいつ…あの帯の鬼より…よっぽど強い気配がする…
首を支える様にしながら座り込んでいる帯の鬼に比べると、遥かに強い気配を感じた。
チラリと後ろを振り返ると、薄汚れてしまったものの、呼吸の乱れ等ないことから杏寿郎さんが現状無傷であることが窺い知れる。
…よかった
それでも念のため
「…怪我は…ないですか?」
杏寿郎さんにそう尋ねる。
「うむ!やはり宇髄は強い!頼りになる男だ!」
杏寿郎さんはそう言いながら、杏寿郎さんの身を鬼から隠すように(身長的に全く隠せてはいないのだが)前に立っていた私の身体をグッと引っ張った。
そして横並びになったのを確認した後
「あの鬼の鎌に決して触れるな」
酷く真剣な声色でそう言った。
「…わかってます。毒…か何かですか?物凄く重い気配を…あれから感じます」
…ひと太刀でもくらってしまえば…きっと大変なことになる
それが嫌でもわかるほど、禍々しい何かをそれから感じた。
鎌の鬼は苛立ったように顔の側面をボリボリと掻き
「下っ端が何人来たところで幸せな未来なんて待ってねぇからなぁ…全員死ぬのにそうやって瞳をきらきらさすなよなぁ」
こちらを馬鹿にするような口調で文句を述べている。そんな雰囲気をかき消すように
「勝つぜ、俺たち鬼殺隊は」
天元さんが力強い口調でそう言った。
「勝てないわよ!柱が2人いようが所詮は人間!弱い人間が鬼である私たち兄妹に勝てるわけがない!」
…成る程。あの鎌の鬼と…帯の鬼、兄と妹なわけね…そう言えば、炭治郎君箱を背負ってない…禰󠄀豆子ちゃんの気配も…近くにはない
「禰󠄀豆子ちゃんは…?」
なるべく声を抑えるようにしながら杏寿郎さんにそう尋ねると
「君がいない間に色々とあってな!今は眠っている!」
何とも意味深い答えが返ってくる。
…その色々が気になるんだけどな…
そんなことを心の中で呟いていると
「余裕で勝つわボケ雑魚がァ!人間様を舐めんじゃねぇ!」
天元さんが鬼を挑発するように声高々にそう言った。