第10章 奏でて、戦いの音を
バッと急ぎ振り向いた先にあったのは
「…っまきをさん!須磨さん!」
無事を願い続けていた2人の姿だった。視界に入った大好きな2人の姿に一瞬気が抜けてしまいそうになるも
…雛鶴さんは…一緒じゃないんだ
そう思ってしまった。
他にも
どうしていたんですか?
どこに居たんですか?
怪我はないですか?
等、聞きたいことはたくさんあった。けれどもそれ以上に
「…っまきをさん須磨さん!ここを…この人たちをお願いします!」
一刻も早く戦いの音が激しくなっていく所へ行きたかった。私の元に駆け寄ってきてくれたまきをさんと須磨さんは
「わかってる!さっさと行きな!」
「私達、天元さんに言われて付近の人たちを避難させに来たんです!だから鈴音ちゃんは安心して戦いに行ってきて下さい!本当は行ってほしくないですけど!」
「須磨ぁ!あんた何言ってんだいっ!」
さっと私と作業を入れ替わりながらも、そんなやり取りを交わしている2人の姿に
「…っ…」
思わず泣きそうになる。
…っ…だめだめ!こんなことしてる場合じゃない!
腰に刺していた日輪刀を抜き、両手に持つ。
「…っいってきます!」
力強くそう告げた私に
「いってきな!」
「いってらっしゃい!」
まきをさんと須磨さんも、私に負けないくらいの力強さでそう言ってくれた。
シィィィィィ
肺にたくさんの空気を取り込み
ドカーンッ!
自分の出せる最高速度で、激しい戦いの音がする方へと向かった。
…っあそこだ!
建物に空いた大きな穴に飛び込み
スタッ
「鈴音!」
鬼と対峙する杏寿郎さんの前に降り立った。それとほぼ同時に
ドン
「竈門少年!」
杏寿郎さんと僅かに距離を取って立つ天元さんの前に炭治郎君が現れた。少し離れたところに、行方知れずと聞かされていた善逸の姿も(目を疑うほど妙な格好をしているし鼻提灯をくつけているという由々しき姿だが)、気合十分な伊之助君の姿もある。