第10章 奏でて、戦いの音を
何の音かなんて考えるまでもない。
…天元さんも…戦ってるんだ!
目的の鬼がこちら側にいる今、一体何と戦っているのか不思議ではあったが、天元さんも共に戦ってくれていると思うとものすごく心強かった。
杏寿郎さん達のところに辿り着いたその時
「おい何をしているんだお前たち!!」
と、男性がすぐそこにある店から出て来た。私たちが鬼と戦っていると言うことなど知るはずもない男性は、店の前で揉め事を起こすなと炭治郎君に向け文句を言っている様だ。
杏寿郎さんや炭治郎君が建物に入り身を隠す様に言っても、状況が理解できないのか(いや出来るはずもない)不審な顔で2人を見るだけだ。
けれどもその時私の耳には
"…うるさいわね"
低い声でそう呟いた上弦の陸の声がしっかり聴こえていた。
…っ不味い…!
嫌な感覚がゾワリと背中を走る。咄嗟に呼吸を切り替え
「響の呼吸肆ノ型…っ空振波浄!」
左右にもつ愛刀を擦り合わせる様にしながらサッと炭治郎君の前に躍り出る。
「…っ鈴音さん!?」
炭治郎君が私の名を呼んだその直後、上弦の陸が背後の帯を物凄い速さで動かた。
ピシッピシピシッ
帯から放たれた斬撃が花街の建物に次々に亀裂を入れていく。それでも、私の直径2メートル四方は響の呼吸の型で作り出した音の壁でその攻撃を逃れることが出来、私の背後にいる炭治郎君と男性は無傷だった。
「…無差別に攻撃を放つとは…なんと非道な!お前の頸…必ずこの場で切り落とす!」
杏寿郎さんも呼吸を駆使し、上弦の陸が放った斬撃をほとんど防ぐことができた様だ。それでも怪我を負ってしまった人たちは少なくなかった。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「いや…私の…私の手が…っ!」
その中には手や脚を切り落とされてしまった人もいる様で、悲痛な叫び声が至る所から聴こえて来る。
…っ…聴いてて…胸が張り裂けそうな声ばかり…
それらは思わず耳を塞ぎたくなる程のものだった。