第10章 奏でて、戦いの音を
「はぁぁぁあ?あんた…不細工に片足突っ込んでる分際で誰にモノ言ってんだい?」
ものすごい形相で私のことを睨みつけてくる上弦の陸に言い返そうと口を開きかけたが
「聞き捨てならないな」
先に口を開いたのは、他でもない杏寿郎さんだった。
「鈴音が不細工?君の目はその心同様に腐り果てているようだ!俺の鈴音は君と違いその心同様とても愛らしい!今すぐその発言を取り消してもらいたい!」
…杏寿郎さん…こんな時でもブレないなんて…やっぱりすごい人だな…
私は呆れを通り越し、感心していた。
「誰の目が腐ってるってぇ!?あんたたち…揃いも揃ってこの私を馬鹿にするとはいい度胸だねっ!」
その言葉と共に、上弦の陸は背後でゆらゆらと揺らしていた帯のようなものを伸ばし、ものすごい勢いで向かってきた。
「雷の呼吸弐ノ型…稲魂っ!」
ギャガガガガッ
…っ…大丈夫…上弦の参よりも遅い…!
ヒュッと伸びてくる攻撃を全て日輪刀でいなしている間に
「炎の呼吸弐ノ型…昇り炎天っ!」
杏寿郎さんが鯉夏さんが捕まっている部分を上手く切り落としてくれた。
「鈴音!その女性を安全な場所へ!」
「はい!」
「ッチ!よくも私の食糧を!」
ガキンッ
「…っ鈴音さん!行って下さい!」
私を追いかけてこようとする帯を炭治郎君が阻止してくれたようだった。
私は炭治郎君の言葉に目配せだけで返事をし、素早く鯉夏さんを取り込んでいる帯を拾い上げると、再度雷の呼吸を使い、なるべく距離の離れた安全な木の下に置いた。
…姿が半分戻りかけてる…きちんと元の姿に戻るまで一緒にいてあげたいけど…ごめんね鯉夏さん!
杏寿郎さんは長時間呼吸を持続することが出来ない。それを鬼に知られるわけには行かない。
呼吸を使い、文字通り雷の速さで戦いの場に戻ろうとした時
ドゴォォォン!
何処からか物凄い爆音が聴こえてきた。