第10章 奏でて、戦いの音を
列車の任務で初めて会った時は、正直に言うと炭治郎君たちにはあまり頼れそうにないなと思っていた。けれども今は、そんなことを思っていたのが申し訳ないと思う程の成長具合をその姿から感じ取ることができた。
「…頼りにしてるね」
そう言った私に
「任せてください!」
炭治郎君は真剣な表情でそう言ってくれた。
「よし!私もその荷物運ぶの手伝う!さっさと終わらせて、一緒に情報収集しに行こう!」
「はい!あ!でも荷物は俺が運ぶので、鈴音さんはただ後ろから着いてきてくれれば大丈夫です!」
「えぇ…言っとくけど、普通の女の子はそんな風に荷物持てないからね?」
「それはそうなんですけど…」
そんなやりとりとしていると
「あぁあ!鈴音ちゃんやっと見つけた!」
同じ太鼓女郎の女の子が、そう言いながら私に近づいてきた。
…嫌な予感がする
そう思いながらも愛想の良い笑顔を浮かべ
「どうかした?私に何か用事?」
と、返事をする。
「女将が、あんたの演奏は品がなさすぎるから夜の宴会までに鈴音に教えてもらってなんとかしろってぇ!酷くない!?」
同僚はそう言いながら可愛らしく頬を膨らませていたが
…やっぱりか…
私はまた情報収集に行けないと思わず顔を顰めてしまいそうになる。けれども
「俺に任せてください」
と、炭治郎君が私にだけ聞こえるように囁いてくれたので辛うじてそれを堪えた。
「…頼んだね」
「はい!あ、明日の日中、定期報告があります!宇髄さんが鈴音さんも来るようにと言ってました!」
「わかった。その件については、また後で詳しく聞きに行くね。…それじゃあ」
炭治郎君に軽く手を振り、私は何故か頼まれてしまったお箏の指導をするため、"ねぇまだぁ?"と言いながら、指先で髪の毛をクルクルと遊んでいる同僚の方へと歩みを進めた。