第9章 燃やして欲しい、私の全て※
杏寿郎さんは私を抱く腕にぐっと力を入れると
「自分の女という表現はあまり好きではないが、確かに鈴音はもう俺のもの!む?とすると"俺のもの"という表現もあまりいいとも言えないな…」
と、なぜか急に悩み出した。
…この人…どうして今このタイミングでそんなことを悩みだするだろう
そんな呆れにもにたことを考えながら"むぅ"と空いている左手を顎に当てながら考え込んでいる杏寿郎さんの顔を見上げていると
「…まぁ初っ端から中に出しちまうくらいだからな…お前の独占欲っつぅの?所有願望も相当なもんだわ」
天元さんがとんでもない爆弾を放ってきた。
「…っそれを…今言う必要はないじゃないですか!!!」
恥ずかしさのあまり邸中に届きそうなほどの大声でそう言うと
「すまない!鈴音が宇髄の大事な継子であることも、大事な任務を控えていることもわかってはいたのだがな!彼女を逃したくないと思う気持ちの方が勝ってしまった結果だ!元柱として不甲斐ない!」
慌てふためく私の姿など少しも気にならないようで、杏寿郎さんは楽しげに笑いながらそう言った。
…っこの人は本当に…黙っていて欲しい時に限って余計なことを言うんだから…!っていうか、結局避妊薬の話は"無い"で終わったんだから、今蒸し返すことないじゃない!絶対…絶対楽しんでる!
自分のなせる精一杯の鋭い視線を天元さんに送ってみるも
「ははっ!お前がそんなこと言う姿が拝める日がくるたぁな!生きててくれてよかったっと心から思うぜ!」
「わはは!俺も俺自身の変化にいささか驚いている!一度死を覚悟したのに生き延びた故、欲深くなったのかもしれないな!」
そんな風に笑い合っている2人の姿を目の当たりにしてしまえば、流石の私も文句を言うことは出来なかった。
天元さんはフッと真剣な表情に戻り
「荒山は必ずお前の元に返すと約束する。だからそいつの事、待っててやってくれ」
杏寿郎さんに向けそう言った。
「頼まれずともそのつもりだ。約束など必要ない」
そんな2人のやり取りに
…私…こんなに幸せでいいのかな…
そんな風に思ってしまったのだった。