第9章 燃やして欲しい、私の全て※
持って行くものはいつもと同じ。爆玉。クナイ。日輪刀。止血剤。増血剤。そして心の準備も出来ている。
「はい。行きましょう。今すぐ」
天元さんはゆっくりと目を瞑り、それを開くと
「…わかった。頼んだぞ」
私の目をじっと見据えそう言った。
「はい。任せてください」
必ず、雛鶴さんまきをさん須磨さんを助け出してみせる
そんな決意を込め、天元さんの目をじっと見返した。けれども、ふと大事なことを思い出す。
「…あの…ひとつ…聞きたいこと…というか…持っていないか…聞きたいものがあるんですけど…」
「なんだよ?」
正直に言うと聞きたくなかった。それを聞くことで、自然と私と炎柱様の間で起こった出来事を天元さんに想像させてしまうからだ。それでも、恥を忍んで聞かないと、後で自分が物凄く大変な思いをする可能性が拭えない。
「…天元さん……忍の避妊薬みたいなの…持ってませんか?」
「…………は?」
こぼれ落ちそうな程大きく目を見開き、それに負けない位あんぐりと口を開けた天元さんのその顔を、私はきっと一生忘れないだろう。
遊郭に売る為だと天元さん直々に化粧を施され、着物を渡された。着替えたそれは、私が持っている着物よりもはるかに上等なもので気後れしてしまいそうな程だった。
着替えを終え、天元さんの元に向かうと
「…馬子にも衣装だな」
そう言いながら天元さんは珍しく優しい笑みを私に向けた。
「…失礼ですね…と言いたいところですが、自分でもそう思います。さ、準備完了です。行きましょう」
そう言って立ち上がる私に
「まぁ待て。慌てんな。もうすぐ来る」
天元さんはそう言った。
「来るって…誰がです?」
「そりゃあもちもろん…」
その時だ
「失礼する!」
音柱邸の玄関の方から聞こえてきたのは
「この声…っ!」
私の耳に、酷く心地よく響く声。
…炎柱様の…声だ!
天元さんが私のことを楽しげに見ていたのはわかっていた。けれどもそんなことはどうでもいいと思ってしまい、着物が崩れるのも気にせず駆け足で玄関へと向かった。