第9章 燃やして欲しい、私の全て※
男なんて信用ならない。
欲望まみれで
大きな声で自分よりも弱いものを威圧し
時には手をあげる
そんな人ばかりだと思っていた
それなのに
炎柱様は、冷たく凍りついた私の心を、その熱い炎で溶かしてしまった。
これから生きて行くなら…この人の隣が良い
私は炎柱様の首に腕を回し、少しの隙間も出来ないように身体を密着させた。
「…っ好き…私を…炎柱様の…杏寿郎さんの恋人にして…下さい…」
炎柱様はその言葉に応えてくれるように私の身体に腕を回し
「…ようやく捕まえた」
強く強く抱きしめてくれたのだった。
きつく抱きしめられ、その温もりにドキドキと胸が高鳴っていた。けれどもそれと同じくらい、温かく大きな腕に包まれ、その肌の温もりを直に感じることに途方もない安心感を覚えた。
…こんな気持ちになるの…生まれて初めて
自分が好きだと思う相手に、同じ感情をぶつけられる…いや、それ以上の感情をぶつけられる。それがこんなにも幸せなことだというのを、私はこの時初めて知った。
「…恥ずかしくて…顔から火が出そうです…」
私の身体は炎柱…もとい、杏寿郎さんのソコから吐き出されたあれこれや、私の中から出てきたあれこれで(更に互いが流した汗)でドロドロになってしまい、そのまま着物を着ることも、ましてや部屋から出ることなど出来るはずもなく、杏寿郎さんが店の人から湯で濡らした大判の手ぬぐいを数枚借りて来てくれた。
布団に座り込み、杏寿郎さんに背を向けながら体の正面をのろのろとした動作で拭いていく。
借りて来た手ぬぐいをナニに使うかなんて明らかなわけで、これから店内を通って外に出なければならないと思うと羞恥心でどうにかなってしまいそうだった。
「しかたがあるまい。ここを選んだのは君だ」
「…それは…そうなんですけど…」
「使った手ぬぐいは買い取ると伝えてある。だから遠慮なく使いなさい」
「え?そうなんですか?」
「うむ。俺とて吐き出したものを拭いた布をそのまま返すのは抵抗がある」
「…そう…ですか…」
杏寿郎さんでも恥ずかしいことがあるんだなと、何やら感心にも近い感情を抱いてしまう。