第9章 燃やして欲しい、私の全て※
「むぅ。俺には君の言う、相応しいだとか相応しくないだとかがよくわからない。俺は君を好いている。君も俺を好いている。それではダメなのか?」
「…っよく考えてください!炎柱様は鬼狩りの名家、"煉獄家"の御長男なんです!それ相応の家柄の女性と結婚して、後継を残さなくてはならない身です!私のような身寄りのない、鬼殺の道に身を置く、天邪鬼なんかと…お付き合いなんてするべきではありませんっ!そんなのは時間の無駄です!」
捲し立てるようにそう言った私の言葉に
「……」
炎柱様は何も答えない。
どうしたのかと、指に少し隙間を開け炎柱様の顔を盗み見てみると、酷く不満気な表情を浮かべ私を見ていた。
「俺がその理由で納得すると思っているのか?」
炎柱様は顔をしかめながらそう言った。
ガッと手を掴まれ
「…ひっ!」
顔を覆っていた手を剥がされてしまい、炎柱様の燃える様な熱い右目が、これ以上ないと言う程の至近距離で私のそれを見つめてくる。
「確かに俺の生家は所謂名家と言うものに当たる。だが俺は、父上から家柄の良い家の娘を娶れとも、鬼殺隊の隊士と恋仲になるなとも言われたことはない。例え言われたとしても、前も君に言った通り、俺は自分の伴侶は自分で決める!それが君だ。天邪鬼で素直じゃない君を…鈴音のことを心より好いている」
その声色に、瞳に、少しの嘘も感じなかった。
…もう…無理だよ
炎柱様が私に向けて送ってくれた言葉たちは、私の心を大きく揺さぶり、炎柱様を好きだと思う気持ちを沈めておくはずだった場所を壊してしまった。
「…っ…後悔…しませんか…?」
「うむ」
「…私…実は…すごく甘えたがりですよ?」
「それは楽しみだ!」
「…遊郭…行っちゃうんですよ?」
「宇髄の奥方達を救いたいんだろう?君のそんなところも好ましく思う」
「…本当に…私で良いんですか…?」
「君以外考えられない」
矢継ぎ早に投げかける質問に、炎柱様は間髪入れることなく答えてくれた。