第9章 燃やして欲しい、私の全て※
「…っ…それは…」
そう聞かれた時、なんと答えるべきかとずっと悩んでいた。
私に好意を示してくれるから?
口付けを交わした(奪われた)相手だから?
共に外で食事をする仲だから?
それらのどれも違うと思った。
「…炎柱様………だから…」
目を逸らしたくなる気持ちをぐっと堪え、炎柱様の目を見つめ返しながら出した答えがそれだ。
"炎柱様が好きだから"
そんな風に言えたらどんなに良いか。
…そんなの…やっぱり言えない…
けれども、どうしても言えなかった。
炎柱様は私の左耳付近についた腕を一旦退け、米神からつーっと流れて来た汗を手の甲で拭う。そして押し倒している私を囲うように再び腕をつき、お互いの鼻先がくっついてしまいそうな程に顔を寄せ
「…それは…どういう…意味だ?」
そう尋ねて来た。
「…っ…意味?…意味は…その…言葉のままです。…もういいですよね」
誤魔化すようにそう言った私は、自分の胸の前で組んでいた手を解き、炎柱様の首に腕を回すと
「…もう…我慢しないで…?」
ちぅっ
その顔をグッと引き寄せ、自ら唇を重ねた。
経験の全く無い私だが、恥ずかしながら知識だけは必要以上にある。何故かと言うと、まきをさんと須磨さんがあまりにも無知な私を心配し(雛鶴さんは呆れた表情でただただ見守っていた)色々教えてくれたからだ。
授かった知識を総動員し、炎柱様を誘惑しようと
ちゅっ…ちゅぅ…
角度を変えながら、啄む様な口付けを繰り返した。
そうして何度も口付けていると、炎柱様の手が私の頭に添えられ、誘惑に乗ってくれたのだと安心感のようなものを覚えた。
なのにだ。
炎柱様は私から顔をパッと晒し
「…その答えでは…荒山に…手を出すことは…出来ないっ!」
と言いながら、私の頭からゆっくりと手を離してしまう。
「…っどうしてです!?…そんなに辛そうなのに…私を…私で…解消してくれていいんです!…そうして欲しいんです!」
私がそう言っているのにも関わらず
「…自己処理くらい…出来る…っ」
炎柱様は身体を起こし、立ち上がるそぶりを見せた。