第9章 燃やして欲しい、私の全て※
「…俺に、何を飲ませた?」
隻眼とは思えない程の視線を正面から感じ
「精力…剤…です」
炎柱様の顔を見ることなくそう答える。
「…成る程。通りで身体が急に熱くなったわけだ」
そう言っている割に、炎柱様の声色にほとんど変化は感じられなかった。
…本当に…効いてるのかな?
そんな疑問を抱きながらチラリと炎柱様の顔を見ると
「…っ!」
頬は紅潮し、猛禽類のような瞳は今まで見た事のない、ギラつくような光を放っており"欲"の気配をはっきりと感じた。
「…ひゃっ!」
炎柱様の右手が私の左手首を掴み、そのままグッと強く腕を引かれ
「…痛っ」
あっという間に部屋の真ん中に敷かれていた布団まで連れていかれ、そのまま荒い動作でそこに組み敷かれる。
「何故…こんな事をする?」
私の眼前には興奮を懸命に堪えている炎柱様の表情だけが広がり、胸が締め付けられると同時に、今まで感じたことのない高揚感を覚えた。
「…っ話せば……黙って抱いてくれますか…?」
私のその言葉に、炎柱様はパッと視線を逸らし
「…話しの…内容に…よる…っ…クッ…我慢だ…!」
頬を紅潮させそう言う炎柱様の顔に、こんな状況にも関わらず、私の胸は不謹慎にも高鳴ってしまうのだった。
「…すると…太鼓女郎として荒山が…遊郭に潜入し…宇髄の妻たちの情報を…集める…と?」
はぁはぁと荒く息をしながらそう言う炎柱様があまりにも辛そうで、精力剤を無断で飲ませたことを思わず後悔してしまいそうになる。
「…はい。…あの…私、経験が無いので…天元さんが、潜入したければ…経験をして来いと…そうしないと…連れて行けないと…っ…だから…」
「…なるほど…それで…その相手に…俺を選んだと…言うわけか…」
「…はい」
炎柱様は眉間にグッと皺を寄せ
「…何故…俺を選んだのか…理由を…教えて欲しい…」
私の瞳をじっと見つめそう尋ねて来た。