第9章 燃やして欲しい、私の全て※
「和、おいで」
いつものように左腕を差し出しながらそう言うと、バサっと羽音を立て和がそこに乗ってくれた。
和を腕に乗せたまま外に出た私は
「…炎柱様のところ…お願いできる?」
和にそう尋ねる。
「もちろん出来るの〜いってくるの〜」
そう言うや否や
バサっ
和は大きな羽音を立て、空高く飛び立っていった。どんどん小さくなっていくその姿を見送りながら
…次に会う時…私は炎柱様と…
「…っ…!」
その先のことを想像してしまいそうになり、頭をブンブンと振りその考えを頭から追い払った。
その後、気分を変えようと、最寄りの甘味屋にお団子を買いに行き、好物のこし餡の乗った団子を手に入れた私はホクホクとした気持ちで長屋へと戻って来た。
長屋の扉に手をかけたと同時に
「遅いぞ。杏寿郎様から文を預かった」
長屋の屋根の方から聞こえてきた聞いたことのある声に驚愕した私は
「…は?」
お団子の入った袋を地面に落としてしまう。
…返事…早すぎでしょ。ていうか、和帰って来てないし。
きっとまた炎柱様に金平糖で餌付けされているに違いない。
"2日後の昼前、長屋まで迎えにいく"
炎柱様の鴉、要の脚にくくられた文には達筆な文字でそう綴られており
「…やるしか…ない…」
くしゃくしゃに折れてしまった文を胸に抱きながら、自分に言い聞かせるようにそう呟いたのだった。
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迎えた2日後。
自然と早く目が覚めてしまった私は、ドキドキする胸を抑えながら身支度をしていた。雛鶴さんまきをさん須磨さんが私のために選んでくれたよそ行き用の着物に袖を通し、化粧もそれに合わせていつもよりも濃くした。邪魔にならないようにくくるだけの髪も、着物に合うよう三つ編みにした。飾り気のない私の精一杯のお洒落だ。
いつもは炎柱様が行く店を決めるのだが、今日は私にお店を決めると事前に伝えてある。
何処に行くかはもうすでに決めてある。