第9章 燃やして欲しい、私の全て※
お館様と言うことはまずあり得ないと端から除外し、天元さんか和みのどちらかだと言うことはわかっていた。けれども、炎柱様は、私が天元さんと会わず、連絡を取っていない間も現れていた。となれば残りは和しかありえない。
「…もう。私の予定を、勝手に炎柱様に教えたらダメでしょ?」
和の頭を人差し指でツンツンつつきながらそう言うと
「たって…鈴音ここに来てから寂しそうだったの…炎柱様がくれば鈴音が喜んで来れると思ったの…」
良かれと思ってしていたことを咎められ、ショックを受けてしまったらしい和は、頭と翼をダラリと垂れしょぼくれてしまった。
「…っわかってる!和が私のためを思ってやってくれたんだってことはわかってる…ありがとう…」
そう言いながら和の頭を再びカリカリしてあげると
「あ、でも〜炎柱様が金平糖くれるって言う理由もあるの〜炎柱様がくれる金平糖は高級なお味がするの〜」
先ほどのしょぼくれ具合はなんだったのかと聞きたくなる程ケロリとした様子でそう言った。
……まったくこの子は…
金平糖に釣られていたことをあっさりと自白した和に呆れはしたものの、それと同時にやはり可愛いと思ってしまう気持ちがどうにも拭えなかった。
「…和のそう言うところ…凄く好きよ…」
「私も鈴音好きなの〜炎柱様の事も好きなの〜だから文持っていくの〜」
「っと…そうだった…」
和との会話ですっかり忘れていたが、私はすぐにでも炎柱様と約束を取り付け、会わなければならない。いや、会うだけでなく、情を交わさなければならない。
…炎柱様が首を縦に振ってくれるかわからないけど…そうなるようになんとか仕向けるしかない。大丈夫…私には須磨さんが前に授けてくれた"とっておき"があるんだもん
いつだったか、須磨さんがそれはもうニッコニコの表情を浮かべながら渡して来た小瓶の姿を頭に浮かべる。
"これはですねぇ、男の人のアレがすっごく元気になっちゃうお薬です!"
仕方なく受け取りはしたものの、そんなもの私には必要ないと、こっそり捨てようと思っていたのを忘れていたものだ。
まさかこんな形に役立つ日がくるとはね…
物凄く、複雑な気分だった。