第9章 燃やして欲しい、私の全て※
「…違うよ。じぃちゃんの所じゃない」
「え?そうなのぉ〜?じゃあうこぎちゃんのところぉ〜?」
「…それも違う」
「えぇ〜じゃあどこぉ〜?」
早く教えて欲しいと催促するような和の口ぶりに
「…炎柱様のところ」
私はボソリとそう答えた。すると
「やったぁ〜!炎柱様のところぉ〜!要様に会える〜!」
和はバサバサと羽根を動かし、喜びの気持ちを全身で表現していた。そんな姿に、私の顔には自然と笑みが浮かんでしまう。
丸く小さい頭を人差し指でカリカリと掻き
「…和は…素直で可愛いね。私も…少しでいいから、あなたみたいになれたらいいのに…」
私とは正反対で、相手への好意を躊躇なく全身を使って表現する姿がとても羨ましかった。私に少しでもそんな素直さがあれば、もっときちんと炎柱様の気持ちとも、そして自分の気持ちとも、向き合えたに違いない。
「ん〜?鈴音もとっても可愛いの〜!ちょっとへそ曲がりさんなだけなの〜」
「…へそ…曲がり…」
まさか鴉である和にそんなことを言われるなんて…我ながら…情けないかも…
そんなことを思いながら遠い目で天井を眺めていると
「でもでも〜炎柱様は、そんな鈴音のへそ曲がりさんな部分も好きだって言ってたの〜」
「…っ!」
和が突如として投下した爆弾に、私の胸がドキッと大きな音を立てた。
「和はね〜炎柱様がとっても好き〜だって鈴音を好きって言ってくれるから〜」
和はそう言いながら先程と同じように、羽根をバサバサと羽ばたかせながら喜びの気持ちを表現している。
「鈴音はね〜炎柱様といるといつもよりもっと可愛いの〜!だから〜炎柱様にたくさん会いに来て欲しくて〜いつ鈴音がいるか教えてあげてるの〜」
「…やっぱり…和の仕業だったんだね…」
なんとなくそうかもしれないと思っていた。
私がいつ、何処へ行き帰ってくるか。それを把握しているのは、私に任務を与えるお館様と、直属の上官である天元さん、そして任務を受け取り、その結果を伝えに行く和の3人(2人と一羽か)だ。