第9章 燃やして欲しい、私の全て※
すぐそこにある、雛鶴さんまきをさんそして須磨さんの4人でお茶菓子を食べながら笑い合った縁側の方へと顔を向ける。
…3人がここに帰って来れない…そんなこと…絶対…絶対にだめ!
あの楽しい時間がもう来なくなることなど考えられなかった。"いつかは私もあんな風に"と、憧れにも似た感情を抱いてしまう程愛し合う4人の幸せな時間が奪われてしまうことなど、耐えられなかった。
「…必ず、達成します」
…その為なら私は…なんだってする
真っ直ぐと、天元さんから一瞬たりとも目を逸らすことなくそう答えると
「わかった。お前の意思を尊重する」
天元さんも、私がしたのと同じように私のそれをじっと見据え
「… 恩に着る」
呟くような小さな声でそう言った。
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音柱邸を後にした私はすぐさま長屋に戻り、炎柱様へと送る文をしたためた。
今まで何度か炎柱様から文が届いたことはあった。けれども自らこうして文を送るのは初めてのことだった。
…まさかこんな形で文を送ることになるなんて…。こんな事なら…一度くらい返事を書けばよかった
この文は、天元さんから提示された条件を達成するために出すものだ。言ってしまえば、私が自らの意思で出すものではない。
今まで何度も返事を書こうと筆を取ったのだが、結局、何を書いていいのかわからず元の位置に戻すことを繰り返した。
それでも決して返事を書きたくないわけじゃなかった。次は、次こそは、と思っている間に、こんな形で文を送ることになってしまったのだ。
…私は…どこまでグズなんだろう
文を書き終え、細長くなるように便箋を折り
「…和ぃ!」
外にいる和に声を掛けた。
バサバサと数回羽音が聴こえた後
「なぁにぃ?」
開けてあった小窓から和が中へと入ってくる。それから、ピョンピョンと跳ね、私の前までやって来た。私の顔を黒々とした瞳でじっと見つめてくる和に
「…文を…持っていって欲しいの」
私がそう頼むと
「やったぁ〜!慈悟郎さんのところでしょ〜?」
そう言って、身体を上下に揺らし喜びを表現した。