第9章 燃やして欲しい、私の全て※
「…そんな…」
私が知る限り、3人とも優秀なくノ一だ。下手をしたらその辺にいる意識の低い鬼殺隊士よりもよっぽど強い。そんな3人、しかも全員と連絡が途絶えてしまうなんて信じられなかった。いや、信じたくなかった。
「あそこに隠れてる鬼は相当厄介だ。これ以上人間を食って力をつける前に…そして3人を救い出す為にも俺は行く。だから万が一、俺が戻らなかったらお前が「私も行きます」っ!」
ぐしゃぐしゃに握りしめていた封筒を見ていた天元さんが、私の言葉にパッと顔を上げた。その表情は、あまりみたことのない驚きを含んだそれで、私自身もその表情に驚かされた。
天元さんはふっと真剣な表情になり
「…お前、遊郭がどんな場所かわかってて言ってんのか?」
目をスッと細めながら私を見た。
「それ位…知ってます」
"遊郭"
そこは男の欲望に満ち満ちた、私にとってはとてつもなく恐ろしい場所である。
「…お前みたいな奴が1番嫌がる場所だろ」
その通りだ。お金で女の身体を買う。考えれば考えるに程ゾッとする。
それでも。
「…私のそんな気持ちより…雛鶴さんまきをさん須磨さんの方が…よっぽど大切です!」
天元さんから少しも目を逸らす事なくそう答えた私を、天元さんもジッと見返してくる。
「…お前がそう望むのであれば連れて行ってやってもいい」
「本当ですか!?」
「だが、その前に俺の質問に正直に答えろ」
天元さんはそう言うと、私の身体をまるで舐め回すかのように、上から下までじっくりと見てきた。
「…なんですか?」
そんな天元さんの視線に、私は思わず自分の身体を隠すように抱きしめてしまう。
「お前生娘だろう?」
天元さんからの突然の問いに、カァッと頬に急激に熱が集まる。
…そんなの…恥ずかしくて答えたくない…でもきっと…答えないと…遊郭には行かせてもらえない…それは…絶対に…嫌…!
「…っ……はい…」
蚊の鳴くような声でそう答えた私の顔は、真っ赤になっていたに違いない。
「だよな」
私の答えを聞いた天元さんは、眉間に皺を寄せ頭をボリボリと掻いている。それから私の顔をジーッと見ると
「お前を連れて行く上で条件がある」
真剣な顔つきでそう言った。