第9章 燃やして欲しい、私の全て※
結局私はその後、炎柱様と食事に行ってしまった。
あんなに
もう会わない
近づかない
と思っていたはずなのに。
その日以降も、1人で暮らす寂しさに負け、その太陽のような笑顔を求め
“今日はどこへ行こう!?"
と、私を待ち伏せするように何処からともなく現れる炎柱様に、おめおめとついて行ってしまうのだった。
そんなことをずるずると繰り返していたある日
''しばらく稽古はつけてやれねぇからちゃんと個人稽古やっとけよ"
と、数日会わなかった天元さんから文が届いた。その文にしたためられた文字に
「…っ…そんな…」
私はくしゃくしゃに成る程の力でそれを握りしめた。
「…虹丸…天元さんは邸に戻ってるの?」
ピタリとくっつく和を全く気にする様子もない虹丸は
「戻ってる。でもまた行く。会いたいなら今すぐ行け」
そう答えた。
「わかった。すぐに行くって…天元さんにそう伝えてもらえる?」
「…仕方ねぇ」
虹丸はそれだけ言うと、バサリと羽根を羽ばたかせ空高く舞い上がった。
「…っ和!私たちも行くよ!」
「わかったのぉ〜!天元様のところに急ぐの〜!」
いつものほほんとしている和だが、私と虹丸のやり取りから何か大変なことが起こっていると察してくれたらしく、珍しく機敏な動きで飛び立った。
音柱邸に辿り着き、挨拶もなしに母屋に上がり、居間へと繋がる廊下を駆け足で進む。
ドタドタと元忍の弟子らしからぬ足音を立てながら居間に転がり込むように入ると、座卓に乱雑に並んだ文をジッと睨むように見ている天元さんの姿がそこにあった。
天元さんの向かいに勢いよく座り
「雛鶴さんまきをさん須磨さんと連絡が取れないってどういうことですか!?」
"あいつらと連絡が取れない。俺も遊郭に行く"
天元さんから送られてきた文の真意を尋ねた。
「言葉の通りだ。定期的に来ていた報告の手紙がめっきり来なくなった。最初は雛鶴、次は須磨、ついにはまきをだ」
天元さんは平静を装いながらそう言っているが、私の耳には普段とは違う息遣いも、強く握りしめた拳の音もしっかりと届いていた。