第9章 燃やして欲しい、私の全て※
中に入ると、天元さんのネズミ達が準備しておいてくれたこともあり、荷物はないものの誰か住んでいてのでは?と勘違いするほどに住める状態になっていた。たたきで立ち止まり、部屋の中を観察していると
「失礼する」
私の後に続き、炎柱様も中へと入って来た。
「きちんとした造りをしているな」
炎柱様の方に振り向くと、炎柱様も私が先ほどしていたように室内をぐるりと見回していた。
私の荷物を肩に掛けた炎柱様が、これから私が住むこととなる部屋を見回している姿を見るのは、なんともむず痒い気分だった。
…っやだ!私、炎柱様に荷物持たせっぱなしじゃない!
「っすみません!荷物、こっちに寄越してください」
「うむ」
炎柱様はそう返事をし、肩から外した荷物を私に向け差し出してくれたが、視線をこちらに寄越してくる様子はなく、依然として部屋のあちこちを観察していた。
たたきから中へと上がり、取り合えずちゃぶ台の横に荷物を置き振り返ると、観察を終えたのか、炎柱様と視線がパチリと合った。そして
「荒山は随分と宇髄や奥方に可愛がられているようだな」
何故かとても嬉しそうな表情をしながらそう言った。炎柱様が何をもってそう言ったのかがいまいちわからない私は、首を傾げ炎柱様の事を見る。
「荒山が長屋で一人で暮らすと聞き心配していたが、ここはきちんと外からも内からも施錠できる。長屋の割に造りもきちんとしている。君が来る前に、近所の様子も見てきたが治安も悪くない。…君の安全を考え、選んだ場所だということがよく伝わってくる」
「…本当…ですか?」
「うむ!」
「…嬉しい…」
音柱邸からここまでくる道すがら、ただただ寂しかった。けれども、ところどころに感じる3人…いや、雛鶴さんまきをさん須磨さん、そして天元さんの4人の気遣いが、それを緩和してくれた。それは勿論目の前にいる炎柱様も同じで
大丈夫。私はきちんとやっていける
心からそう思うことが出来た。