第9章 燃やして欲しい、私の全て※
「…っ…わかり…ました」
頭の中の冷静な自分が”駄目”だと言っている声は確かに聞こえているはずなのに、炎柱様の好意に甘えたいと思ってしまう自分にとうとう抗うことが出来なくなってしまった私は、視線を地面に向けながらボソリとそう答えた。
「そうか!それはよかった!」
声を弾ませそう言った炎柱様の様子に、音柱邸を出た時からずっと感じていた寂しさが、どんどん和らいでいく。
…私の…何がそんなに良いんだろう。私だったら…こんなうじうじした天邪鬼…絶対ごめんなのに
そんな事を考え、地面から視線を外せずにいる私に
「ほら!この荷物を片付けるのだろう?手伝おう!…と言いたいとことではあるが、流石に家に上がり込むのは気が引ける。外で待っているから済んだら声を掛けてくれ」
炎柱様はそう言い、扉の前から離れていこうとする。
「…っ待ってください」
慌てて炎柱様に声を掛け、私を見下ろす炎柱様の隻眼を恐る恐る見上げた。
「…天元さんのネズミが、すぐに住めるようにと中を片付けてくれています。私の荷物も…そんなに量はないし…中で待っていてもらって…構いません」
ぼそぼそと、なんとも歯切れ悪くそう言った私に、炎柱様は顔をキョトンとさせ、僅かに驚いた表情を見せる。その反応に自分が発した言葉が急に恥ずかしいもののように思え
かぁぁぁっ
と、頬に熱が集まっていくのを感じた。
「…やっぱりな「そうか!ならばお言葉に甘え中で待たせてもらおう!荷物を持っているのも俺だ!さあ入ろう!」……わかりました」
”やっぱりなしで”という言葉を遮るようにそう言われ、もうどうにでもなれと半ば投げやりになった私は、それ以上何かを言うのはやめ、ゆっくりと自分の住まいとなった長屋に足を踏み入れた。