第9章 燃やして欲しい、私の全て※
けれどもその後、フッと柔らかな笑顔を浮かべ
「宇髄に揶揄われていようがいまいがそんなことはどちらでもいい。こうして荒山に会う機会を設けてもらえたのだから俺としては感謝の言葉でも述べたいくらいだ」
「…っ…」
甘く優しい声色でそう言った。
そんな顔で、そんな声で、そんなことを言われてしまえば、私の胸は当然のようにドキドキと甘い音を立て騒ぎ始めてしまう。
「それにだ。荒山の家の場所が分かったとあれば、時間が空いた際にいくらでも誘いに来たい放題だ」
ニコニコと笑みを浮かべながらそう言った炎柱様に反し
「…っだめですよ!いくら住んでいる場所を知っているからって…そう気軽に来られては困ります!」
言葉の通り本当にやりかねない炎柱様に私は大慌てした。
「そんなことはない!」
「そんなことあります!」
「なぜだ!?」
「…っ理由なんてありません!」
「理由がないのであればその言葉に従うことは出来ない!俺は、荒山の師である宇髄の奥方達に、君のことをよろしく頼むと言われている!一度交わした約束を反故にすることなど俺には出来ない!」
「…っ!」
真剣な表情でそう言った炎柱様に、私はそれ以上言葉を返すことが出来ない。
本当は、こうして炎柱様が会いに来てくれたのが嬉しかった。好意を持った相手が、自分を心配し、会いに来てくれるのは、誰だって嬉しいに決まっている。
しかもそれに、心から慕っている雛鶴さんまきをさん須磨さん達の気遣いが加わっていると知ってしまえば、嬉しさは2倍、いや3倍にも感じられる。
視線を左右に揺らし、何も言えずにいると
「深く考える必要はない。美味い物は一人で食べるよりも二人で食べた方がより美味い。元柱ということもあって俺が誘っても皆中々首を縦に振ってくれなくてな…」
炎柱様は悲しげに眉の端をを下げながら(明らかにわざとらしくはあったが)
「可哀そうな男だと、どうか付き合って欲しい」
私の目をじっと見ながらそう言った。