第2章 脱兎の如く
この村田さんという先輩隊士と共同任務を共にするのは今回が2回目で、初めて共同任務にあたった時も思ったのだが、この人は今まで私が出会ってきた人の中で一番”普通の人”だ。
普通だなんて言ってしまうのは、本人にとっては心外だろうし、嬉しいとはとうてい思えないだろう。けれども私は、村田さんのことを”普通”と感じられたことがもの凄く新鮮で嬉しかった。
村田さんは体格がいいというわけではないが、年齢の近い、そして私よりも背の高い男性だ。そんな人に対して、初めから、心がざわつくことなく会話をできることなんて、私にとってはもの凄くまれで、なんだか嬉しく思ったのをよく覚えている。
きっとこの人なら私の話に耳を傾けて協力をしてくれるはず。
私と村田さんを仕留める機会を伺っているのか、鬼の攻撃が一度止んだ。
「村田さん、お願いがあります」
村田さんは辺りきょろきょろと見まわし、次に来ると思われる鬼の攻撃に警戒しながら
「お願い!?こんな状況でなんだ!?」
私の背に、その背を合わせながらそう言った。
「詳しくは説明できないんですけど、私には攻撃が来る直前、どの方向から、どんな攻撃が来るかがわかります」
「…っさっきもそんなような事を言っていたみたいだが…本当なのか!?」
「本当です!さっきの攻撃だって、あの隊長と私に向かって来て、私は全部よけられましたよね?だからお願いです!信じてください!じゃないと村田さんも次は足首をやられます!私も一人で4体は対処できません!」
「…っわかった!荒山の指示に従おう!」
「ありがとうございます!」
やっぱりこの人は話の分かる人だった!これでなんとかあのちょこまかと煩い鬼の頸を切れる!
もうすぐ次の攻撃がくるはずと思い、私は耳に神経を集中し周辺の音を聴いた。
…来る!