第9章 燃やして欲しい、私の全て※
そして翌日。
「…いってきます」
昨日のように上手いようにはいってくれず、邸から離れた場所での任務を和から言い渡されてしまい
…だめだ…この距離じゃ…きっと出発予定の時間には帰ってこれない…
私はがっくりと項垂れた。
"雛鶴さんまきをさん須磨さんと一緒にいたいから任務に行きたくありません"
そんな馬鹿なことが言えるはずもなく、重い手足を何とか動かし任務へ赴く準備をした。
見送りに出てきてくれた3人(ついでに天元さん)に告げた"いってきます"は、覇気などまったくない、我ながら情けない声だと思ってしまうようなものだった。
そんな私に
「ほら。そんな顔しないの」
「あんたそんなんで任務行ったら怪我するからね?気合い入れな!」
「私!遊郭一の花魁になって見せます!鈴音ちゃんも遊びに来てくださいね」
雛鶴さんまきをさん須磨さんが掛けてくれた言葉は、それぞれの個性をしっかりと感じられるそれではあったが、3つとも私を思い遣ってくれる優しさを含んだものだった。
「…何かあったら…必ず助けに行きます。だから…どうぞご無事で」
"ご無事で"なんて言葉は、任務に向かう3人に向けて言うのには相応しくないのかもしれない。"必ず助けに行きます"だなんて、天元さんがいるのだから、私なんかがそんなことを言うまでもないのかもしれない。
それでも、どうしても言わずにはいられなかった。
「「ありがとう」」
「ありがとうございます」
左から順番に雛鶴さん、まきをさん、そして須磨さんにギュッと抱きついていく。すると、そのお返しといわんばかりに、3人は私を優しく囲むようにしながらギュッと抱きしめてくれた。
「…雛鶴さん、まきをさん、須磨さん…いってらっしゃい」
そんな私達の様子を、普段であれば"大袈裟だな"だとか、"嫁達に懐きすぎ"だとか、小言の一つや二つでも言ってくる天元さんも、この時だけはただ黙って見守っていてくれたのだった。