第9章 燃やして欲しい、私の全て※
「だって゛ぇぇぇえ!天元様と鈴音ちゃんと一緒に暮らせないなんて…寂しすぎるんですも゛ぉぉぉぉん!」
須磨さんはそう言いながら、天元さんの筋肉質な腰回りにぎゅっと抱きつきその身体に身体をうずめわんわんと泣き続けている。
「…ったくよぉ。折角泣き止んだってのに、お前が戻ってきたからまた須磨が泣き出しちまったじゃねぇか」
天元さんはそういいながら須磨さんの頭をポンポンと若干適当にも見える手つきで撫でている。
…そんな理不尽な
と、思いながらも、天元さんが好きで好きでたまらない須磨さんの気持ちを考えれば、こうして泣きつきたくなる気持ちも理解できる。
「ほらお前ら、とりあえず居間に行くぞ」
「…はい」
「…はい゛ぃぃ」
「…歩きにきぃから少し離れろや」
そう言って依然として腰にまとわりついている須磨さんにそう言いながらも、決して無理に引きはがそうとはしない天元さんの後に続き、私も居間へと向かった。
「おかえり鈴音」
居間に着くと座卓に腰かけている雛鶴さん。そして
「おかえり」
まきをさんの姿があった。
「…ただいまもどりました」
普段であれば、須磨さんが天元さんにこうしてくっついていれば、真っ先に引きはがしに行く筈のまきをさんがそれをしに行かない様子に、私の胸はぎゅっと締め付けられた。
「須磨。荒山。そこに座れ」
そう言って天元さんが指し示したのは、雛鶴さんとまきをさんの隣だった。
須磨さんは鼻をすすりながら雛鶴さんの隣に座り、私はまきをさんの隣に座った。
私がまきをさんの隣に座ったのを確認した天元さんは
「荒山お前に話しておくことがある」
私の目をじっと見ながらそう言った。これから何を言われるのか、もうわかってしまっていた私は
…聞きたくない
そう思ってしまっていた。けれども、私なんかがそんなことを言える立場でもないし、私なんかよりも遥かに雛鶴さんまきをさん須磨さんの方が寂しくて辛いに決まっている。