第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「…なるほど。二刀流で雷の呼吸を扱うとこのような感じになるのか」
「そうですね…想像していた以上にしっくりきます。恐らくほかの雷の呼吸の型も、二刀流で扱うのに適したものがあるはず」
「そうか」
グッと刀を炎柱様の方に押しやり、その反動を利用して後ろへと飛び炎柱様との距離を取った。
「だが回復訓練の際、荒山は響の呼吸ばかり使っていただろう。俺はてっきり荒山は響の呼吸を極めるのかと思っていた。なぜあの時は試さなかったんだ?」
炎柱様は刀身を鞘に納め、私の手元をじっと見ながらそう尋ねてきた。
「あの時は、善逸に炭治郎君に伊之助君がいたので。雷の呼吸の型は一人でも稽古できますが、響の方はそうもいきません。だからこそ雷は後回しにしました」
「なるほど!やはり荒山はよく考えているな!」
刀を鞘に納めた炎柱様はズンズンと私の方に歩み寄って来る。一瞬警戒心のようなものが湧いてきたものの、まさか刀鍛冶の里の長である鉄珍様の前で下手なことはしないだろうと、そのまま動かず炎柱様の動向を観察した。
炎柱様は私と少し離れた場所で立ち止まると
「試しに持たせてはくれないだろうか?」
心なしかいつもよりも目をキラキラさせそう言った。
「いいですよ」
返事をしながら、刀身を上にして持っていた刀を指の動きだけでクルリと下に向け、炎柱様が受け取りやすいように柄の部分を差し出した。
「そんな風に指だけで向きを変えられるとは!やはり荒山は忍のようだ!」
「天元さんに仕込まれていますからね」
炎柱様は私の手から日輪刀を受け取り、しげしげとその様子を観察したり、振ってみたりしている。