第8章 響かせろ、もっと遠くまで
中庭に着くと同時に、先ほど鉄珍様のすぐ後ろにいた付き人らしき人が
「炎柱様、こちらをお使いください」
と、言いながら刀を持ってきた。
「すまない!」
炎柱様はそれを受け取ると、いつも自身の日輪刀をそうしているようにベルトに挿し込んだ。
日輪刀をベルトにさし込んだ炎柱様は
「荒山のはそうして左右に挿すのか。確か宇髄は背に背負っていたと思うが…形状は似ていても君のはそうするんだな」
そう言いながら顎に手を当て、私のベルトの左右に挿してある日輪刀を観察している。
「天元さんの日輪刀の長さは私の日輪刀の倍以上ありますからね。太さも凄いし、あんなの腰に挿してたら流石の天元さんも動きにくいと思います」
「確かにその通りだ」
私と炎柱様は、そんな会話を繰り広げながらも、お互いに適度な距離をとり向かい合う。
鉄珍様と、炎柱に日輪刀を渡してくれた方、そしてもう1人の方を含め3人が、縁側に腰掛けそんな私と炎柱の様子を見ている。
スラリ僅かな音を立て、炎柱様が刀を抜いた。
「荒山は…抜かなくていいのか?」
「…はい」
そう返事をしながら、右手で左側の柄を、左手で右側の柄をゆっくりと掴む。
「お忘れですか?私は元々、雷の呼吸の使い手…とうよりも、雷と響、両方の使い手です。雷の呼吸の型にもこの日輪刀の形状は合うはず」
「…成る程」
「試すのは、雷の呼吸の方です。壱ノ型を使うので、感想を聞かせてください」
「あいわかった!」
そう言いながら日輪刀を構えた炎柱様に向け
「では…いきます!」
シィィィィイ
前屈み気味に体勢を低くし、日輪刀を掴む力を強め
「雷の呼吸壱ノ型… 霹靂一閃っ!」
左右同時に抜刀し、刀身を交差させながら炎柱様へと切り掛かった。
ガキーンッ
交差した刀身は炎柱様に見事に受け止められてはしまったが、炎柱様は私の勢いに押され僅かにだが後退した。