第8章 響かせろ、もっと遠くまで
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「鈴音ちゃん、今日も行くんか?」
そう尋ねてきたのは、刀鍛冶の里の長である鉄地河原鉄珍様だ。
「はい!今日の鍛錬はもう終えたし、もう耳があの音を聴きたいってうずうずしてるんです!」
「…変な趣味を持った子だね」
ひょっとこのお面に隠れ鉄珍様の表情を直接見ることは叶わないが、きっと呆れているに違いない。
「午後のおやつの前には最終調整が済むからね。それまでには戻ってきてや」
「わかりました」
私は足取り軽く、目的の場所へと出発した。
私がこの刀鍛冶の里に来て今日で3日が経つ。
通常と異なる形状の日輪刀は里の長である鉄珍様が打つらしく、恐れ多くも私の日輪刀も鉄珍様に打ち直してもらっている。
里に来た初日に手にした元の形と全く異なる様になった日輪刀は、驚くほどに手に馴染んだ。もうそのまま渡してもらえるのかと思いきや
”いい感じやね。でもまだ調整ひっつようやから。まぁのんびり温泉にでも浸かりながら2.3日待ったってや”
と、何とも軽い口調で言われ、いろんな意味で衝撃を受けた。
”早く帰らないと…炎柱と鉢合わせちゃうかもしれない”
そう思ったものの、自分のわがままで日輪刀を打ち直してもらっているというのに早くして欲しいなどと言えるはずもなく、庭先をかりて鍛錬をしたり、温泉に浸からせてもらったりしながらのんびりとした時間を過ごさせてもらうことにした。
そんな中で、私は見つけてしまったのだ。
休憩がてら里内を散策していると
…何…この音?
ふと耳に届いた、私の心をくすぐる音。
ジャコッジャコッジャコッ
もっと側でこの音が聴きたい
そんな衝動に駆られ、私はその音の発信源へと足を進めた。