第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「私、予定通り明日から刀鍛冶の里に行ってきます」
私がそう言うと、天元さんはニヤついていた顔から真剣なそれへと変わり
「煉獄の訓練、無事済んだのか?」
表情と同じく真剣な声色で私に尋ねてきた。
「はい。もう私1人ではもちろんの事、善逸、炭治郎君、伊之助君の4人がかりでもほとんど敵いません」
私のその答えを聞いた天元さんは
「…そりゃあ良かった。例え前ほどの力が出せなかったとしても、あいつは隊士たちにとって1番手本になる奴だ。あいつがいるのといねぇのじゃ…隊の雰囲気は全然違ぇ」
私があまり見ることのない、ホッとしたような表情を浮かべながらそう言った。
「…回復訓練も、最初は確かに私たちが炎柱様のお相手をしている感じだったのに、途中からは完全に稽古をつけてもらっている感じになってしまいました。まぁお陰様で、他の呼吸との連携の取り方、応用の仕方をたくさん試すことができましたけど…」
「ったり前ぇだろ!俺たち柱とお前等じゃ、天と地ほどの経験の差があんだよ!もっと必死こいてついて来い」
天元さんから睨むような強い視線を送られ、スッと背筋が伸びた気がした。
「…わかってます!だからこそ、私は新しい日輪刀を一刻も早くこの手にしたいんです。任務に穴を開けてしまうのは忍びないですが…」
「何言ってんだ。お前の代わりなんざ五万といんだ。グダグダぬかしてねぇでさっさと行け」
そう言いながら天元さんは、しっしと野良猫を手で追っ払うかのような仕草を私に向けた。
「天元様。いくら鈴音相手だからとはいえ、そんな風にするのは良くありません」
「そうですよぉ!鈴音ちゃんは猫ちゃんじゃないんですよ!可愛い人間の女の子です!」
「まぁ中身は猫とそんな変わんない感じするけどね」
「それは否定できませんけど!」
そんな会話に思わず
…え?否定してくれないの?
と、心の中で突っ込みを入れてしまう。
「…とにかく!明日から行ってきます!…でも、その前に…一つだけ、確認してもいいですか?」
明日安心してここを発てるように、どうしても確認しておきたい事が私にはある。