第8章 響かせろ、もっと遠くまで
俯いてしまいそうになるのをグッとこらえ
「…っ皆さんがそんなめかしこんで歩いていると、街にいる人みんなが目を奪われてしまいそうですね!」
動揺を悟られないようお道化ながらそんなことを言った。
「なぁに馬鹿なこと言ってんだ。俺は何時だって人の目を惹いちまう派手ないい男に決まってんだろ」
いつも施しているあのへんてこりんな化粧(流石の私もこれは直接言えない)を施していない、一般的に見れば確かに誰しもが振り返りそうな整った顔の天元さんがそう言った。
「あ、はいそうですね」
そんな天元さんに向け適当な返事をする私に
「…っとに。お前まじ可愛くねぇ。煉獄の野郎はこいつの何がそんなに良いんだか…」
天元さんはげんなりとした表情でそう言った。その言葉に
「…っ知りませんよそんなの!というか!天元さんが裏で色々炎柱様に情報流してるの知ってるんですからね!あんなにもぐいぐい来られて…私すごく困ってるんですから!」
人の気も知らないで…!
むかっ腹が立った。
「へぇ…ぐいぐいねぇ」
つい先程までげんなりとしていた表情を浮かべていたくせに、私の失言を見逃してくれるはずもない天元さんが、ニヤニヤと、それはもう楽しげに笑いながら腕を組み私のことを見ている。
その側で雛鶴さん、まきをさん、そして須磨さんも天元さんとは違いニヤニヤとはしていないが、ニコニコと、まるで幼子でも見ているんだろうかと思ってしまう程の暖かぁな笑顔を浮かべ私を見ている。
「…っなんでもないです!忘れてください!」
だめだ。ここにいると…4人と一緒にいると、外行きの自分が全然保てない。自然と…素の自分が出てきちゃう。
こんな風にありのままの自分をさらけ出せるのは、じぃちゃんと善逸の前だけだと思っていた。けれど今は、この場所が、天元さん雛鶴さんまきをさん須磨さんの側が、それと同じくらい居心地のいい場所となってしまっている。
…だめ!しっかりしなくちゃ!
心の中で自分にそう言い聞かせ、ざわついた気持ちを落ち着ける為に
ふぅぅぅ
と、長めに息を吐いた。