第8章 響かせろ、もっと遠くまで
けれども私には
「当分お会いすることは出来ません」
と、はっきり言えるれっきとした予定がある。
「任務が立て込んでいるのか?何!10分、いや5分で構わない!少しでも時間が取れるのであれば連絡が欲しい!」
炎柱様は一旦はそう言ったものの、
「…いや、荒山の事だ。自ら連絡を寄越してくることはない…宇髄に連絡を寄越すよう協力を仰ぐしかないか…」
顎に手を当て、無駄に神妙な表情を浮かべながらそう言った。
「天元さんに言っても無駄ですよ」
「む?なぜだ?」
「だって私、打ち直してもらっている日輪刀を受け取りに、しばらく刀鍛冶の里に行きますので」
どうだ。これなら会いに来るなんて言えないでしょう?
そんな思いを込め、ニッコリとわざとらしい笑みを浮かべながらそう言うと
「そうか!」
予想に反し、炎柱様はパッと明るい笑みを浮かべた。私としては、その明るい笑みにものすごく嫌な予感しかしない。
…え…まさか…違うよね…でもあの時…確か炎柱様の刀…上弦ノ参の蹴りでぽっきりと折られて…いやいや…まさかね!
世の中とはそれはまぁよく出来ていて、嫌な予感というものほど当たってしまうものだ。
「奇遇だな!実は俺も、諸々の片づけが済んだら行くことになっている!」
「…そ…そうですか…」
一瞬予定を変えてしまおうかと思った。けれども、そんな個人的すぎる理由で変更をお願いすること等まかり通るわけがないし、日輪刀が手元にない限り任務に就く事が出来ない。それはつまり、自分以外の誰かの負担が増えることを示す。
結局は早く打ち直してもらった刀を手にしたい気持ちの方が勝った。
「里で会えるといいな!」
「…そ…そうですね…」
ちっとも会いたくないけど
日輪刀は既に里に届けてもらっており、作業は進めてもらっている。出来上がりを確認し、何の調整の必要もなければ2.3日で帰れるはずだとも聞いている。