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音の溢れる世界でいつか【煉獄さん】【鬼滅の刃】

第8章 響かせろ、もっと遠くまで


隣にいる炎柱様が気になってちっとも音が楽しめない!


最初はそう思っていたはずなのに


じゅわぁー
しゅわしゅわしゅわ
ぱちぱちぱちぱち


大将が天麩羅を揚げるその音を聴けば聴くほど


…いい音…幸せ…


その音に引き込まれ、目をつぶり、久しぶりに聴くことのできたその音にただひたすら耳を傾けた。


「…いい顔するねぇ」


穏やかな口調で言った大将のその言葉に


「だって…なんとも言えないこの素敵な音…他では感じられません」


私がそう答えると


「違うよ。俺が言ってるのは鈴音ちゃんの事じゃなくて杏寿郎君のこと」

「え?」


大将にそう言われ、つぶっていた目を開き、隣に座っている炎柱様へと顔を向けた。


「…っ…!」


視線に移りこんできたのは、最後に炎柱様の方を見たときには正面に向けていたはずの身体が完全に真横に向き、いつもよりも僅かに細めた目を私へと向けている炎柱様の酷く優しげな顔だった。そのなんとも言えない表情に、私の胸は甘く甘く締め付けられる。

パッと炎柱様から視線を外し


「…っそんなに…じろじろ見ないでください…」


そう言うも


「すまない。だがこうしないと左目では荒山の顔が見えない。今後こうして君を真正面から見る機会が増える。嫌でも慣れるから大丈夫だ」


炎柱様は私から視線を外そうとはしてくれない。


…やめてよ…そんな目で…見ないで


炎柱様は決してそう口に出してはいないのだが、その目は私に”好きだ”と訴えかけてきている気がしてならない。そんな私たちの様子に


「知った二人が好い仲になっていただなんて、なんだか嬉しいわ」


女将さんが声を弾ませながらそう言った。その言葉を


「…っ違います!」


私は慌てて否定した。

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