第1章 始まりの雷鳴
そのまま和を肩に乗せ、家に着くと、外には畑の野菜を採るじいちゃんの姿が。私はじいちゃんの方へと足をすすめ、
「指令が来ました。朝食を終えて、準備ができたら…ここを発ちます」
「…そうか」
瑞々しい野菜を片手に持ち、ほんの少し淋しそうな表情を浮かべるじいちゃんにそう告げる。
「よし!最後…じゃなかった、今日の朝食はいつもよりも気合を入れて作らせてもらいますから!少し待っていてくださいね!」
既に指令が来ているからあまりのんびりとはしていられない。私は急ぎ玄関をくぐり(和は家から1番近い桃の木へと飛んでいった)、草履を揃え、洗面所で手を洗い台所へと向かった。
…美味しい朝食、作るんだ。
今までの感謝の気持ちを込めながら、私は朝食作りへと取り掛かった。
最後の朝食と、片付けを終え、部屋に戻った私は支給された隊服へと袖を通す。
凄い。着心地抜群なのに…しっかりしているのがよくわかる。
隊服を身に纏い、じいちゃんからもらった、羽織と同じ色模様の脚絆を付ける。最後に1番大切な羽織に袖を通せば
「出来た」
鬼殺隊士、荒山鈴音の完成だ。
鏡の前に行き、自分の姿を確認すると、
うん。良い感じ。
けれども少し気になった事がある。
…すごく素敵な色味だけど…私には可愛すぎやしないかな?
じいちゃんからもらった羽織と脚絆は、いささか自分には似合わないのでは無いのかと言う不安がよぎる。だからと言って着ないという選択肢はないが、私はそんな不安を抱えながら、じいちゃんと善逸の待つ居間へと向かった。
そんな私の不安は、
「いやぁぁあ!姉ちゃんがかわいぃぃい!」
善逸の雄叫びによって何処かへと吹っ飛ばされて行った。
「…ふふっ。お世辞でも嬉しい。ありがとう!」
私が善逸にそう笑いかけると、スッと真剣な表情に戻り
「いやお世辞じゃないから。違うから。なんならそんな可愛い姉ちゃん行かせるの即刻中止したい位なんですけど」
そんな事を言う善逸に
「何を馬鹿な事を言っとるんじゃ」
じいちゃんは心底呆れた表情をしながらそう言った。けれども直後に、私の方にその顔を向けると
「良く似合っとる」
と優しい笑みを浮かべながらそう言った。