第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「…仕方ねぇ。確かにさっきはぎょろぎょろ目ん玉に歯が立たなかったからな…お前らと仲良く力合わせてってところはいまいち納得いかねぇが、そこまで言うのであればこの俺も協力してやろうじゃねぇか」
…よし。そうなればこっちのもの。
「ありがとうそれじゃあ「但し条件がある!」…条件?」
この状況で一体どんな条件を突きつけられるのだろうかと考えるも、中々これだというものは浮かんでこない。伊之助君は右手の親指を立て、自分の顔の方へとそれを向けると
「俺の事は今後、”親分”と呼べ」
「………親分…?」
そう言って来た。
なんて馬鹿馬鹿しいんだろう
内心そう思ったものの、それで話を聞いてもらえるようになるのであればまぁいいかと納得することにした。
「ぞれじゃあ親分、これから親分、善逸、炭治郎君、私の4人で炎柱様に挑むけど…準備は良い?」
「あたり前ぇだろ!つまんねぇ質問すんな!」
僅かに挑発するようにそう尋ねた私に、伊之助君がそう答えてくれたので(善逸がぎゃあぎゃあ騒いでいるのはやはり聞こえないことにする)
「それでは炎柱様。稽古の再開をお願いします」
くるりと炎柱様の方に向き直り
「うむ…4人纏めてかかってくるといい!」
中断していた名ばかりの機能回復訓練が再開を迎えた。
伊之助君が私の声に耳を傾けてくれるようになると、徐々に4つの歯車が上手く機能するようになり、訓練の終わりを迎える時間には、見事伊之助君が炎柱様から1本とることに成功した。
…やり切った!
そんな達成感を感じながらホクホクと荷物をまとめていると
「荒山!」
炎柱に声を掛けられ
「なんでしょう?」
しゃがんだ体制のまま機嫌よく声のする方に振り返る。
「君のお陰でとてもいい回復訓練が出来た!礼を言わせてくれ」
「いいえ!お礼だなんて…むしろ私の方が稽古を付けてもらっていたようなものですし」
「いいや!そんなことはない!お陰でようやく胡蝶から屋敷に帰る許可も下りた!外で食事を取るのも構わないそうだ!」
大声でそう言いながら、炎柱様は徐々に私との距離を詰めてくる。