第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「基本的にはできると思います。でも、飛ばす系…と言えばいいんですかね?そう言った型の方が合わせやすいです」
「確かに、上弦との戦いの際は伍ノ型に合わせてもらったな。あれにはとても驚いた!」
「成程…」
「なのでおそらく、伊之助君の獣の呼吸とはあまり相性が良くないと思います」
私がそう言うと
「はぁ!?なんでだよ!ケチ臭えこと言うな!俺の技も強くしろ!」
伊之助君はそう言いながら猪頭からフシューっと荒い息を噴出している。
「私としてもそう出来るのであれば嬉しいけど…」
「けどなんだ!」
「伊之助君の型って近距離型のものが多いでしょ?そうなると必然的に私と伊之助君の距離も近くならないといけないから、お互いの息が合わないと、ぶつかり合ったりして伊之助君が動く邪魔になっちゃう」
「っち使えねぇ」
「おいお前ふざけんな。姉ちゃんに謝れ」
「そうだぞ伊之助。そんな風に言うのはよくない」
ふと私の頭に良案が浮かんできた。
…伊之助君は…親分だなんだって言って人より自分が優れた立場になることを好む…であればあぁしてこうしてと指示するよりも…もっと別の言い方をした方が良いのかもしれない
「伊之助君」
「なんだよ猫女」
「む?猫女とは荒山の事か?」
「他に誰がいるってんだよ」
「確かに荒山は野良猫のようにかわい「あぁぁぁ!もう!炎柱様!話の腰を折るのはやめてください!」なぜだ!」
炎柱様が何を言おうとしているのか途中で気が付いた私はそれをバッサリと遮った(腰を折ったのは私の方だと言われてしまえばその通りだ)。
炎柱様は”むぅ”と不満げな表情をしており、そのすぐ隣にいる胡蝶様はくすくすと笑いながら肩を震わせている。私はそんな微妙な空気を仕切りなおすように
コホン
わざとらしい咳ばらいを1度し
「私、伊之助君がみんなの中心になって戦う手伝いをしたいの!その為には、ちょっとこうして欲しいとかあぁして欲しいとかお願いしちゃうこともあるんだけど…数少ない”両刀使い仲間”として、伊之助君がより活躍できるように頑張るから!ね?だから少し協力してくれない?」
我ながら
”随分なご機嫌取りだな”
と思いながらも、円滑に事を進めるためには必要だと自分に言い聞かせ、その考えにそっと蓋をした。