第8章 響かせろ、もっと遠くまで
…あのままじゃ、一番壁側の善逸が怪我するかも…!
さっとその場から跳躍し、壁と飛ばされていく3人の間に入った。
「…っ荒山!」
炎柱様は私が潰れる姿でも想像したのか、慌ててこちらに向かって来ようとする姿が視界に映り込んできた。私はすっと手を前に出しそれを静止し
シィィィィィ
呼吸を深め
「響の呼吸、肆ノ型…空振波浄!」
型を放った。すると私を中心に
テーン
波状で音が広がり
「…え?何これ何これ」
「勢いが…止まった…?」
「なんだよ今の変な音」
その波が、炎柱様によって吹き飛ばされてきた勢いを相殺し、壁にめり込まんばかりの勢いで飛んできた3人は
スタッ
体制を整え無事鍛錬場の床に着地することに成功した。
…よかった…成功した
何度も繰り返し挑戦し、ようやくものにした響の呼吸の肆ノ型。まだ実践で試したことは数える程しかなかったが、自分に飛んできた攻撃の勢いを殺したり、より強い音を飛ばせば通常の大きさの鬼の3.4体であれば吹っ飛ばすことがてきた。
そして私の身体のどこかに触れていれば、自分だけでなく、その触れている人物の身を守ることが出来ることも実証済みだ。
「響の呼吸とは面白いものですね」
胡蝶様がそう言いながら私の方へと近づいて来る。
「…面白い…ですか?」
私がそう尋ねると
「俺も同意見だ」
そう言いながら炎柱様もこちらに歩み寄って来た。
「基本の呼吸と派生の呼吸を合わせても、鈴音の生み出した響の呼吸ほど防御や援護に特化した呼吸を俺は知らない。極めて面白いと思う!」
「ええ。仲間と共闘することはあっても、合わせるのはお互いの動きであって、型自体を合わせるわけではありません。そんなことが出来る型…私は他に知りません」
「うむ!俺も上弦ノ参との戦いの際、そのことにとても驚いた!」
「…え…あの…」
どう反応していいかわからず戸惑っていると
「今この場に”炎””水””雷””獣”そして私が扱う”蟲”の5種類の呼吸があります。響の呼吸はその全てに合わせることが可能なのですか?」