第8章 響かせろ、もっと遠くまで
自分に自信のない自分。
自分が嫌いな自分。
他人の目が気になる自分。
それを真に乗り越えない限り、私はきっと人の上に立って戦えるような強い人間にはなれない。
…そうじゃなきゃ…私は…炎柱様の気持ちを…受けとめることなんて出来ない。
そう思った自分に
私…炎柱様の気持ちを…受け止めたいと思ってるんだ
自分の気持ちをまたしても自覚させられ
「…いやだなぁ」
思わずそう呟いてしまう。
「鈴音さん?」
そんな私の顔を胡蝶様が心配げな様子で覗き込んできた。
「…っなんでもありません!」
慌ててそう答えると、胡蝶様は私の左肩に右手を優しくポンと置き
「鈴音さんの呼吸の特性、そしてその探索能力の高さを加味すれば、今後柱の補佐として任務に同行するように言われることも少なくないはずです。そうなると少なからずやっかみを受ける可能性もあります。それを撥ね退ける強さを…持ってください」
諭すような口調でそう言った。
”柱の補佐”
「…っえ?何です…それ?柱の…補佐ぁ!?」
衝撃的な言葉に胡蝶様の方へぎゅるんと首を向けそう尋ねると
「はい!煉獄さんと任務に行ってもらった時と同じで、鈴音さんのその特殊な能力と、対応力の高さを考えれば、柱が早く任務を終えられるよう駆り出される機会は多くなると思われます。私個人としても、宇髄さんの許しを得られるのであれば、是非こちらに来て欲しいほどです」
胡蝶様はにっこりと、見とれてしまうような笑みを浮かべそう言った。
「…っ…でも…私は…自分の任務と鍛錬で手いっぱいで…刀の打ち直しにも行く予定ですし……」
…そんな風に思ってもらえるほどの大した力なんてないのに
頼りにされる事は嬉しい。けれどもそれと同じくらい、その期待に応えられず落胆されてしまうことが怖かった。
視線を左右に揺らし、戸惑いを隠せずにいると
「…鈴音さんは随分とご自身に対する評価が低いようですね」
胡蝶様はそう言いながら私の肩から手を放し、私よりも一歩前に出た。胡蝶様の背中を追って視線を上げると、私と同じくらい小さな背中と、その向こうで炎柱様に次々といなされていく善逸、炭治郎君、そして伊之助君の姿が目に入った。