第8章 響かせろ、もっと遠くまで
そんなこんなで迎えた今日。
最後の10回目は予想通り伊之助君も加わり4対1となった。
人数が増えれば有利…と思われるが決してそうではなく、統率を取ること、波長を合わせることがより難しくなる。加えて炭治郎君と伊之助君だとかなり勝手が違った。
「…ちょ…伊之助君!一人で突っ込まないで!みんなと動きを合わせて!」
「あぁん!?なんでお前の言うこと聞かねぇとならねぇんだ!俺の方が先に刀を2本使ってた!つまり親分は俺だぁ!」
「おい伊之助!姉ちゃんを困らせるな!」
「伊之助!鈴音さんの話を聞くんだ!バラバラの動きじゃ煉獄さんに太刀打ちできない!」
私だけでなく、善逸や炭治郎君の言葉もあまり聞いてはくれず、完全に空回りをしていた。
…全然波長が合わない…どうしたら良いの…?
善逸、炭治郎君、伊之助君、そして炎柱様から一旦距離をとり4人の様子を遠目に観察していると
「小隊の統率を図れるようになることは、今後鈴音さんにとって重要な課題となります。野性の暴れ猪のような伊之助君とどう呼吸を合わせ戦うか。私たちのように柱という絶対的な地位でない限り、指示に従わない隊士は必ず出てきます。特に鈴音さんの事をよく知らない隊士であれば、大抵鈴音さんの事を”自分より下”とみなし、そうなるでしょう。それを上手くコントロールする力を身に着ける絶好の機会です。さあ、どうします?」
いつの間にか隣に立っていた胡蝶様にそう問われてしまった。
実際にそんな状況は何度となく経験してきた。その度に心のどこかで”私には人に指示するような器も力量もないのに”と思いながらも、そうすることが任務を円滑にこなし、負傷者を出さないことにつながるのだからと言い聞かせやってきた。
そんなことを繰り返すうちに気が付いたことがある。そしてそれが今回の任務、そして炎柱様への恋心を自覚したときに、より確証に近いものとなっていた。
私に必要なのはただ単に鬼と戦うための”強さ”だけじゃない。"自分の心の弱さに打ち勝つ強さ”も必要なんだ。