第8章 響かせろ、もっと遠くまで
炭治郎君は私と善逸が炎柱様と2対1で打ち合いをしていた時に、自分がそこに加わることをすでに想定し、どう動くかを考えていたのか、あっという間に私と善逸の動きに合わせられるようになった。
私がこう動いて欲しいと指示すればその通りの動きをし、尚且つ炭治郎君自身も私にこうして欲しい、ああして欲しいと意見をくれた。波長の取れた動きが出来るのは、なんだか耳に心地のいい音楽を聴いているようでとてもいい気分だった。
それでも、私たちが優勢でいられたのは打ち合いをしていた時間の半分までだった。
どう考えても右目しか見えていない炎柱様の視界は狭いはずなのに、長年培ってきた鍛錬と実践経験から成しえる技なのか、ずるいのを承知で見えていない筈の左側から仕掛けてもそれはもう見事に攻撃をいなされてしまう。
速度のある善逸が破れ、一工夫加えて切り込んだ炭治郎君も、悉くその攻撃を防がれてしまった。
ならばと思い、速度に加え低さを加え切り込んでいったものの、やはり私も善逸と炭治郎君と同様に防がれてしまった。
私は思わず攻撃の手を止め
”炎柱様、あれで本当に以前の半分程度しか力が出せていないんですか?臓器の損傷ってそんなにすぐ直るんですか?視界も前の半分になってるはずですよね?”
果敢に炎柱様に挑んでいく炭治郎君を尻目に(善逸はこの時すでに心がぽっきりと折れており、後ろからぎゃいのぎゃいの言っているだけだった)訓練の様子を見守っている胡蝶様に近づきそんなことを尋ねてしまった。
胡蝶様は
”ええその通りです。私も、ここまで早く回復するのは想定外でしたが…いい方の想定外は大歓迎ですので”
そう言って嬉しそうに笑っていた。
”…柱って…恐ろしいですね”
私はそんなことを言いながらも、生き生きと木刀を振るい
”まだまだ!2人とももっと思い切り来るといい!”
そう言いながら炭治郎君と善逸に激を飛ばす炎柱様に目を奪われてしまっていた。そんなことをしていると
”ちょっと姉ちゃん!何一人で休んでるわけ!?助けてよ!俺たちの中で姉ちゃんが一番強いんだからね!”
なんて善逸に怒られてしまいい
”…ごめんごめん”
そう平謝りした後、両手の木刀を持ち直し、炎柱様にどう攻め込むかを考えたのだった。