第8章 響かせろ、もっと遠くまで
結局3週間の間で私が炎柱様と訓練が出来たのは10回程度だった。その内4回までは力と力でぶつかり合っても辛うじて炎柱様の力に対抗出来た。
けれども5回目からは力のみで炎柱様に対抗することが不可能になり
”バシーン”
しっかり持っていたはずの木刀を見事なまでに弾かれた。じんじんと痺れた手を凝視している私に
”どうだ?荒山はもう力では俺に勝てない。ここからは荒山本来の戦い方をしてほしい”
そう言われ
”…わかりました”
聴く耳を使うようになり、それと同時に新しく打ってもらう予定の日輪刀に模した短めの木刀2本(私仕様で注文し事前に作ってもらっていた)を使うようになった。
持ってきた荷物の中から本来の木刀の長さの半分にも満たない木刀を取り出し、それを両手に持ち構えた私を見た炎柱様は
”二刀流か…やはり君は宇髄の継子だな。面白い!俺を打ち負かすつもりで全力で来るといい!”
まるで私に稽古をつけてくれるような口ぶりでそう言った。
木刀1本を使用していた時とすっかり動きが変わり、炎柱様が私の動きに慣れる前に胡蝶様の訓練終了の合図が入ったことで何とか一人でも5回目、そして6回目の訓練を終えることが出来た。
けでどもこの時点で、炎柱様の機能回復訓練と言うよりも、ただ私が訓練を受けているような雰囲気が否めなくなっていた。
その疑問を胡蝶様にぶつけると
”煉獄さんが隊士を”訓練する訓練”だと思って頂ければ結構です。次の訓練は2対1…鈴音さんと善逸君二人で煉獄さんに挑んでもらいます。善逸君は鈴音さんと同門でしたよね?と言うことは、善逸君とは息も合わせやすいですよね?”
そう返されてしまい、やはり挑んでもらうという時点で訓練の趣旨が変わったことを実感せざるを得なかった。
迎えた7回目の訓練。
善逸がどんな動きをするか。そんなのは考えなくても体が覚えていた。
自然と善逸の動きに合わせることが出来たし、ぎゃいぎゃい言いながらも速さという観点だけで言えば、私と同じく炎柱様に負けず劣らずの力を所持していた善逸との共闘は非常にやりやすかった。