第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「きっと響の呼吸だけじゃなくて、雷とも相性は悪くないと思うんです。私、今までは響と雷、切り離して考えていました。でも響に雷の呼吸を少しでも混ぜることが出来たら、補助的役割だけじゃなくて攻撃としても使えるようになると思うんです」
他人任せと言われたらそうだといえてしまう響の呼吸の型。それだけでは私は大切なものを守ることは到底出来ない。そして、自分の事を好きになれない自分のままだ。
「…天元さん」
「なんだよ」
「私、もっともっと…強くなれますよね?」
みんなから頼られて後輩の目標になれる。そんな炎柱様のお人柄に近づけたら。そうなることが出来たのなら。烏滸がましいと吐き捨てるだけのこの恋心を、伝えることが出来る日が来るのかもしれない。
そんな淡い期待を込めて投げかけた私の質問は
「んなくだらねぇこと俺に聞くな」
「…っ…」
天元さんに一蹴されてしまう。
……そうだよね…本当…なにくだらない質問してるんだろう…
馬鹿なことを聞いてしまった自分が恥ずかしくなり”すみません”と口を開こうとした。けれども
「お前、俺様の弟子だろ?そうなってもらわなきゃ困んだよ阿保たれ」
”俺の弟子だろ”
その言葉が
”お前ならできる”
暗にそう言ってくれている気がして
「…はい!強く…なります!」
強く背中を押してもらえたような、そんな気がしたのだった。
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それから3週間ほど経過し、炎柱様の機能回復訓練を手伝う日々も今日で終わりを迎える。