第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「…っもう!何がそんなにおかしいんです!?私だって急に好きだなんて言われて戸惑ってるんです!人がこんなに悩んでるのに、笑い事じゃありませんっ!」
私が半ば怒鳴るようにそう言うと、天元さんは珍しくキョトンとした表情を見せた。
…え?何?私…何かおかしなこと言った?
なぜそんな顔で見られるのか理解が出来ず、思わず台所にいる雛鶴さんまきをさん須磨さんに助けを求めるようにそちらへと視線をやってしまった。
私と目があった雛鶴さんは、とても言いにくそうな顔をしながらも
「あのね鈴音。確かに炎柱様の手紙には鈴音の事を食事に誘いたいっていうことと、ゆくゆくは恋仲になりたいとは書いてあったみたいだけど、鈴音に思いを告げたとは…書いてなかったのよね」
そう答えたのだった。
「あんた、言わなくてもいい事自分から言ってんだよ」
「恋仲になりたいって書いてあったから、きっと鈴音ちゃんの事好きなんだろうなとは思っていましたが、まさかもう思いを告げられていたなんて…!鈴音ちゃんってば水臭いです!どうして私に教えてくれなかったんですかぁ!?」
雛鶴さんまきをさん須磨さんのその反応に
…私の…馬鹿…
がっくりと座卓に突っ伏し顔を隠すことしか出来なかった(復活した天元さんがまたしてもゲラゲラ笑っており二度とお土産なんか買ってきてやるものかと心に誓った)。
「…とまぁおふざけはこの辺にしておいて」
一通り笑い終えた天元さんは、先程までの雰囲気とは一変し、真剣な表情で座卓に置いたままにしていた私の日輪刀を手に取った。
「この形の刀を握るのは久しぶりだな」
そう言いながら天元さんは鞘を少し抜き、露になった刀身をじっと見つめている。
「天元さんも、最初はこの形状の日輪刀を使っていたんですか?」
「初期の初期だけな。…で、どんな日輪刀にしたいか、決まってんのか?」
天元さんのその問いに
「もちろんです」
そう答え、いつも必ず持ち歩いているクナイを2本取り出し両手に持った。